中国マネーの勢いやパワーはアメリカ国内にあっても歴然としている。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が指摘する。
* * *
中国の成功者の二世を指して使われるのが「富二代」という言葉だ。ニュアンスとしては小金持ちではなく大金持ちである。
そんな「富二代」にまつわる最近のホットな話題は、米国留学中の「富二代」たちが乗り回す高級車のこと。なかでも一番の注目は彼らの起こす事故についてだ。
初心者にもかかわらず運転の難しいヨーロッパのスポーツカーを乗るため、事故が多発していて、そのニュースはたちまち国内のネットで広がるという。そこには金持ちの行動を面白く思わない〝仇富〟の心理が働いているともいわれる。
今年5月7日、新華ネットに掲載された記事もやはりアメリカに留学していた学生の死亡事故を伝えていた。事故が起きたのは3日、場所はカリフォルニア州モントレーパークである。運転者が死亡したこともあり詳細は触れていないが飲酒運転の末の事故だと報じている。現地では華字紙が大きく伝えていたという。
ただ、この記事の肝は事故そのものではない。「富二代」たちの高級車に費やす金額がいかに大きいかを伝えているのだ。その額は、市場調査会社のCNWによると155億ドルにも達する(2013年)というから桁外れである。
現在、アメリカに暮らす中国の留学生は全部で約23万人と言われるが、単純に頭数で割っても一人当たり6万7000ドル。一人一人がベンツ一台ずつ買うほどの購買力という計算になる。
23万人の留学生がこれだけ派手に使えば、中国からアメリカへの富の還元は凄まじい勢いで進むことだろう。
同じような話題で思い出すのは、2013年8月24日付で『中国新聞網』が発した一つの記事だ。タイトルは、〈昨年1年間、中国人がアメリカで買ったアメリカの不動産の総額は123億ドルに達する うち7割が現金で支払い〉だった。金額の123億ドルは、全米リアルター協会(NAR)がはじき出したものだ。
NARの集計によれば、中国人が買った物件の平均値(42万5000ドル)は、アメリカ国内で売買された物件の平均値の約2倍で、すべての外国人が購入した物件の平均値(27万6000ドル)の1.5倍にもなるという。
現在、全米50州のうちなんと44州で中国人の不動産投資額がベスト5に入っていて、うちニューヨークとハワイで第2位、カリフォルニアで第3位となっているが、なかでもカリフォルニアは人気が高く、過去1年間のうちに同地で売り出された不動産の約半分が中国人によって買われているといった集計結果もあるというから驚きだ。