政府が唱える新成長戦略は、邪魔者だった様々な規制を取り払ったはずだった。しかし、いまだに様々な分野に「岩盤規制=役人の掟」がはびこっている。これらの全容を明らかにする話題の新刊『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)を上梓した元キャリア官僚・原英史氏が、法人税タダの法人について斬り込む。
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安倍政権の成長戦略には「法人税引き下げ」が盛り込まれた。たしかに「日本の法人税率が高い」という指摘はその通りだが、実はすべての法人が高い法人税を払っているわけではない。日本には法人税が原則タダになる法人が存在する。
「公益社団法人・財団法人」「学校法人」「社会福祉法人」などだ。法人税法の規定上、そうした「公益法人等」は法人税を納める義務がない(収益事業を行なう場合を除く)。
たしかに、慈善活動で募金を集めて困っている人たちに配るといった典型的な公益事業を考えれば、剰余金にいちいち法人税を課す筋合いはないだろう。だが、たとえば「保育所」のような例だと話がおかしくなる。
保育所の運営主体はかつて、役所の通達により公立か社会福祉法人立に限られていたが、2000年に「株式会社立」も認められることになった。待機児童ゼロを達成した横浜方式では株式会社立の保育所が大きな役割を果たした。ところが社会福祉法人立なら無税、株式会社立なら課税という格差があるのだ。
社会福祉法人と株式会社の違いは何か。突き詰めると結局、「役所が認可・認定したかどうか」だ。社会福祉法人は役所の「お墨付き」をもらい、指導・監督を受ける。これに対して株式会社は届出さえ出せばいい。
役所が許認可権を背景に特定業界に特権を与えると、癒着が生じ既得権化する。社会福祉法人への役所からの天下り問題は長く指摘されてきた。学校法人でも「規制緩和によって生まれた株式会社立学校を文科省がイジめる」といった同様の構図がある。
※週刊ポスト2014年7月18日号