通信教育大手「進研ゼミ」で知られるベネッセホールディングスは7月9日に顧客の氏名、住所など約760万件の個人情報が流出したと発表した。流出は最大で2070万件に至る可能性があるという。
マクドナルドでは「100円マック」などを打ち出すなど、やり手経営者として知られる原田泳幸氏が同社の会長兼社長が就任したばかりでありながら、前代未聞の個人情報漏洩事件が起きた。ベネッセの個人情報漏洩問題の裏には何があったのか。今回の件は、社員ではない内部の人間がデータベースにアクセスし、情報を外に持ち出したとベネッセは説明している。
ベネッセ関係者に個人情報の取り扱いについて聞いた。
「ベネッセは個人情報の扱いに神経質すぎるほど気を遣っていました。多くの会社でも同様ですが、個人のUSBメモリは持ち込み禁止です。個人のUSBを会社から支給されているパソコンに接続すると、セキュリティが作動し、個人情報を管理する部署から警告する内線がかかってきます。そのため、会社から支給のパスワード管理されたUSBメモリしか使えないのです」
ベネッセに立ち入る取引先の担当者も、その情報管理の徹底ぶりに舌を巻く。
「あるときから、ベネッセ社員が働くフロアには取引先は入れなくなったんです。会議室に通されるならわかりますが、物品の受け渡しなどもフロアに併設された3畳ほどの小部屋に通されて担当者が出てくるまで待機するという状態でした。外部の人がフロアに立ち入るのはほぼ不可能な状態でした」
そして、前出のベネッセ関係者は今回のような情報漏洩が発生した理由について、首をかしげる。
「個人情報の含まれるリストなどは特定のパソコンでないとアクセスできないよう徹底もしていました。しかも、今回の漏洩では幼児から高校生にまでに及ぶ情報とのこと。ベネッセでは学齢によって細かく部署が分かれています。関わりのない部署のデータの入手はおろか、閲覧することも難しいです。かなりパソコン操作に詳しいか、大きな権限を与えられていないと難しいのではないでしょうか…」
今年度に入り業績悪化が著しかった進研ゼミ部門。ベネッセからの転職希望者を多く担当したという転職エージェントは次のように語る。
「今年度に入り、ベネッセからの転職希望者が急増。女性が働きやすい、福利厚生が充実しているというイメージだったので、『いったい何があったんですか?』と転職希望者に訪ねてしまったほどです。口ごもっていましたが、閉塞感を理由に挙げていましたね」
情報報漏洩についての発表があった翌日10日、ベネッセでは全社朝礼が開かれた。いったいそこで何が語られたのか。今後一枚岩になり、問題の収拾にあたれるかが、再興の鍵といえそうだ。