芸能

伝説の棋士の孫娘が囲碁のヒロインに 中卒選択は迷いもせず

藤沢里菜二段。史上最年少15歳のタイトルホルダー

 囲碁界に新しいヒロインが誕生した。藤沢里菜二段、15歳。「第1期会津中央病院杯・女流囲碁トーナメント」で見事優勝を果たし、女流棋戦最高額の賞金700万円を手にした。15歳9か月でのタイトル獲得によって、謝依旻女流名人が17歳1か月で樹立した最年少記録を大きく塗り替えるおまけもついた。

 優勝してから半月ほどたったが、「まだ実感がわいていません。とにかくどの碁も苦しい戦いで、ほとんど逆転勝ちばかり。運がよかった。まさかタイトルが獲れるとは思っていませんでした」と、里菜さん。よく笑い、はきはき話す明るいお嬢さんだ。

 里菜さんはもうひとつ、最年少記録を持っている。それは11歳6か月でのプロ入り。なんと、小学5年生でプロ試験に合格し、6年生からプロ棋士として活動しているのだ。

 現在は高校1年の年齢だが、進学はしていない。「囲碁一本がいいので。高校に行くかどうかなんて、迷いもしませんでした」。可愛らしい顔の奥には、しっかりとした自分の意思があった。

 名人などタイトルを獲得する超一流棋士は、ほとんどが中卒だ。有望な棋士ほど義務教育のうちにプロになって、サラリーマンの平均給料に近い、いや、それ以上の対局料や賞金を獲得する生活が10代のうちに始まる。

 たとえば現在トップ棋士の井山裕太六冠は25歳。昨年の賞金総額は1億6000万円だ。進学しないというのは、生活に困らないというのもあるが、なにより、若いときに囲碁に打ち込むことは、勝負師にとって大事なことのだ。真剣勝負、勝つこと、負けること、研究……10代での経験すべてが血肉となり、棋士としての将来を決めるといってもいいだろう。

 勝ち負けがはっきりする世界。努力が必ず結果に表れるとも限らない世界。端から見て「大変だなあ」と思うのだが、本人たちはどうも違うようだ。里菜さんは「自分の好きなことをやって(生活できる)、幸せです」。一流棋士の道を里菜さんも確実に歩んでいる。

 ところで、「囲碁棋士」で「藤沢」といえば、故藤沢秀行名誉棋聖をご存じのかたもいるだろう。棋聖や名人など23ものタイトルを獲得した大棋士だっただけでなく、門下や国境を超えて若手を育成し、囲碁界に大きな足跡を残した。

 また、私生活では、酒・ギャンブル・借金・女性関係などの破天荒ぶりも有名で、アルコール依存症の禁断症状と闘いながら対局を重ね、癌を3回も克服するなど、「最後の無頼派」とも呼ばれた。

 里菜さんは秀行名誉棋聖の孫で、父親の藤沢一就八段(秀行の五男)も棋士。お兄さんもお母さんも、母方の祖父も碁を打つ囲碁一家で育った。

 碁のルールを覚えたのは、6歳。洪清泉(ほんせいせん)二段に習った。洪二段は強い棋士を育てるのを目的とした「洪道場」を主宰している。現在は12人のプロ棋士を輩出し、期待の若手棋士の多くが洪道場出身だ。

「他の子より小さいときから里菜を教えているので、妹のような感じ」と、洪さんは出世頭の活躍に目を細める。里菜さんは修業時代、週6日、1日6時間道場に通って研鑽を積み、プロ入りを果たした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「夢みる光源氏」展を鑑賞される愛子さま
【9割賛成の調査結果も】女性天皇についての議論は膠着状態 結婚に関して身動きが取れない愛子さまが卒論に選んだ「生涯未婚の内親王」
女性セブン
勝負強さは健在のDeNA筒香嘉智(時事通信フォト)
DeNA筒香嘉智、日本復帰で即大活躍のウラにチームメイトの“粋な計らい” 主砲・牧秀悟が音頭を取った「チャラい歓迎」
週刊ポスト
『虎に翼』の公式Xより
ドラマ通が選ぶ「最高の弁護士ドラマ」ランキング 圧倒的1位は『リーガル・ハイ』、キャラクターの濃さも話の密度も圧倒的
女性セブン
羽生結弦のライバルであるチェンが衝撃論文
《羽生結弦の永遠のライバル》ネイサン・チェンが衝撃の卒業論文 題材は羽生と同じくフィギュアスケートでも視点は正反対
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
撮影前には清掃員に“弟子入り”。終了後には太鼓判を押されたという(時事通信フォト)
《役所広司主演『PERFECT DAYS』でも注目》渋谷区が開催する「公衆トイレツアー」が人気、“おもてなし文化の象徴”と見立て企画が始まる
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン