鹿児島県枕崎市と言えば、カツオをはじめとした美味しい海産物を楽しめるだけでなく、風光明媚なロケーションを満喫できる九州屈指の観光地。しかし今、そんな魅力豊かな枕崎市の観光業が脅かされている。
「枕崎の火之神公園から望む開聞岳は、市有数の観光スポット。見事な円錐形の開聞岳は、別名“薩摩富士”と呼ばれるほどの名峰です。真っ青の太平洋と空とのコントラストは本当に美しいですよ。でも、ここ1~2年ほど中国のPM2.5の影響で、くっきり見える日が少なくなっているんです」
そう力なく話すのは、地元住民のAさん。映画『男たちの大和』のロケ地にもなった火之神公園から、日本百名山に名を連ねる開聞岳を望むのは、枕崎観光の鉄板コース。その重要な観光資源が、中国の大気汚染の間接被害を受けているというのだ。この視界不良問題、何も枕崎市に限ったことではないから末恐ろしい。
「車に乗ろうと思うとフロントガラスに塵が積もっている、なんてことも見慣れた光景になりつつありますね。火之神公園は、地元の人にとっても憩いの場所。そこから見える開聞岳は地元の誇りでもあるだけに、本当に腹立たしいですよ」(前出・地元民)
さらに、枕崎観光を脅かす中国の魔の手はこれだけではない。枕崎を代表する特産品・かつお節にも影響が出るかもしれないというのだ。
「黒潮に乗って日本近海に北上する前の稚魚や小型のカツオを、中国が根こそぎ乱獲してしまう。日本には成魚になるまで獲らないという暗黙のルールがありますが、中国は知ったことではないと片っ端から獲ってしまう。漁獲量が減っていけば、カツオの価格も高騰してしまう。地元の特産品ですから由々しき問題ですよ」(前出・地元民)
風光明媚な景色だけでなく、350年以上の歴史を持つ枕崎のかつお産業にまで暗い影を及ぼしかねない中国の副作用。しかも、当の本人にはその自覚がないのが、何よりもタチが悪い。
馬鹿につける薬はないというが、何かしら処方しなければ日本の資源は磨り減っていく一方だ。