マイホームはサラリーマンにとって「生涯最高額の買い物」だけに、消費税もバカにならない。だからこそ、今年3月までマンション市場は「駆け込み需要」に沸いた。では、増税後のこのタイミングでマンションを買うのは損なのか──。徹底取材すると、意外な現実が見えてきた。
今年6月、消費増税前の「駆け込み需要」の時に決断できず、増税後に妻の妊娠が分かり、マイホーム購入の検討を始めたA氏(都内の30代サラリーマン)。A氏は、「乗り遅れた」と思っていたようだが、不動産屋の営業マンが差し出したある物件に心奪われた。それは丸ノ内線西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅から徒歩8分のタワーマンション。
コンシェルジュサービス付き、ゲスト用の宿泊ルームサービスもある。高層階にある72平米2LDKの部屋には、広々としたウォークインクローゼットも付いている。
今年3月には6500万円で出ていた物件だが、現在は6100万円まで下げている。そして営業マンは、A氏にこう耳打ちした。
「売主さんとの交渉次第ですが、5000万円台までは頑張れると思います」
人気の東京23区を離れ、郊外となると格安物件はもっと見つけやすくなる。都内・多摩地区に住む40代サラリーマンのB氏が見つけた物件は、西武池袋線、新宿線が乗り入れる所沢駅(埼玉県)周辺で、今年3月には3280万だった物件が、現在2880万円まで値を下げていた。
部屋は低層階だが、84平米4LDKとファミリー向けとして広さは申し分ない。リビングは床暖房完備で、玄関前のポーチにはトランクルームもある。駅からは徒歩約10分で、急行に乗れば40分もかからずに勤務先の新宿に着く。3000万円台で3LDKの物件を考えていたB氏には願ったりの物件だ。
「営業マンの話では、駅周辺には同じようなタワーマンションが10棟近くあり、競合する中古物件が多い。供給過多で増税前に売れ残り、仲介業者を変えたことを機に一気に400万円も下げたらしい」(B氏)
このように、郊外のベッドタウンや複数の路線が乗り入れるターミナル駅周辺の場合、戸数の多い大規模マンションや超高層マンションが多く、物件が供給過多になりやすい。
「他にも、千葉県ではJRと東武線、京成線の駅がある船橋、神奈川ではJRと京急線の駅がある川崎、埼玉では川口なども物件が供給過多になっているため、値下げしたマンションに出会う可能性が高い」(不動産ジャーナリストの榊淳司氏)
船橋では、JR下総中山駅から徒歩7分の3LDK・72平米の築浅物件が3180万から2980万円に、川口でもJR川口駅から徒歩10分の3LDK・66平米の物件が同様に200万円値下げ(3080万円→2880万円)していた。
※週刊ポスト2014年8月8日