7月28日、4月30日に前立腺がんのためこの世を去った作家の渡辺淳一さん(享年80才)の『お別れの会』が、都内のホテルで営まれた。
そこには、共演NGといわれてきた、映画『失楽園』で主演を務めた黒木瞳(53才)と川島なお美(53才)が同席した。2人とも渡辺さんとはただならぬ関係にあったと言われているが、『お別れの会』でのその胸中はいかに。17年前の映画『失楽園』では川島は主演女優レースで黒木に敗れた。だが、その後は連ドラで見事高視聴率を稼ぎ出し、女優としての評価も高まった。
「今思うと、小説家って憎いなって思います。ご自分の人生さえも物語の一場面のようにしてしまうんだなって思いました。先生は、忘れられない思い出を心にドカンと残して、逝ってしまわれました」
壇上で、渡辺さんとのエピソードを披露した黒木。彼女には多くの人々の前で、渡辺さんとの思い出を口にする機会を与えられた。これは津川雅彦、三田佳子、阿川佐和子さん、小池真理子さんといったその世界のいわば大御所のみが許された場だった。
そんな黒木を川島は会場の後方からただ見つめることしかできなかった。
「渡辺さんと黒木さん、川島さんの関係は、簡単にいえば“作家”と“女優”の関係です。長く寵愛を受けていた川島さんのほうが、もしかしたら渡辺さんにとっては黒木さんよりも大切な存在だったかもしれません。
しかし、『お別れの会』という公の場では“愛”より“実力”や“知名度”が物をいうわけです。それが“お別れの言葉”の有無という扱いの違いとなってしまいました。つまり、川島さんにしてみれば、17年前に味わった屈辱を再び受けることとなったわけですからキツいですよね」(芸能関係者)
スピーチを終え、安堵した表情でステージを降りた黒木。最前列にある円卓の椅子に腰を下ろした彼女のもとには、ひっきりなしに列席者が足を運び、声をかけていた。
「黒木さんの周りには各界の重鎮や顔見知りと思われる人が集まり、ずっと談笑していました。
対して、川島さんは、黒木さんのいるテーブルには近寄りもせず、常に会場の後ろで立ちっぱなし。時折、年配の女性に声をかけられている姿は見かけましたが、それ以外はずっとひとりぼっちでした。手持ち無沙汰なのか、帯をしきりに直したり、持っていた鞄を覗き込んだりしていましたね」(別の出席者)
同じ作品のヒロインを演じながら、哀しくもくっきりと分かれてしまったふたりの“明”と“暗”。
そんな歴然とした差を見せつけられながら、それでも川島は、会が終わるまで決して会場を離れることはなかった。こういった『お別れの会』では、弔問や献花だけしてその場を後にするのが一般的でありながら、一方の黒木の姿も、最後まで会場にあった。
上智大学文学部(メディア論)の碓井広義教授は、こう分析する。
「おそらくふたりとも、“渡辺先生がくれた最後の舞台”だと思っていたのでしょう。
もし途中退席したら、最後の舞台の主役の座を譲ったことになる。ラストシーンまで出続けるのが、主演女優ですからね。“私こそが”という女の意地を感じます。
渡辺さんへの恩を忘れない女という側面をアピールしつつ、会場に集まった業界関係者へ、“まだまだいい女優だ”と印象づけるのも忘れない。お互いに、いくつもの計算と女の意地があったわけですから、そりゃ帰れませんよ」
死してなお、女心を惑わす渡辺さん、なんとも罪な御仁である。
※女性セブン2014年8月14日号