注目のアメリカのベンチャー企業のなかで、企業と個人、個人と個人を結ぶアメリカ初のシェアビジネスが大きな産業に成長しつつある。そのシェアビジネスのひとつ、「oDesk(オーデスク)」を実際に利用した体験から、大前研一氏がシェアビジネスの最前線について考察する。
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ネット社会における現在のトレンドは「シェア」だ。カーシェアリングやシェアハウスと同じように、所有や占有ではなく共有、つまり「必要な時だけ借りる」「必要な分だけ借りる」という概念である。ネットの進化によって、企業と企業ではなく、企業と個人、個人と個人を結ぶアメリカ発のシェアビジネスが、世界的な巨大産業になっているのだ。
会社の業務も、翻訳やプログラミング、デザインなどの幅広い分野で、ネットを通じてボーダレスに世界中の優秀な人材を必要な時に必要な数だけ、日単位・時間単位・分単位で借りるクラウドソーシングサービスが隆盛だ。
私もアメリカ最大手の「オーデスク」を利用して海外の個人に翻訳などを頼んでいるが、満足のいくクオリティでスピードが速い上、値段は日本国内の会社に頼んだ場合の5分の1~10分の1である。日本最大級の「クラウドワークス」も登録会員が約19万人、仕事の依頼総額が約119億円に達している。
これらはいわば各企業が社外のタレントをシェアしているわけで、このサービスを活用すれば、多くの業務分野で自社内に正社員や契約社員やアルバイトを抱え込む必要がなくなるのだ。また、デザインや面白い発想など特殊な才能を持った人を必要に応じて見つけることも可能だ。
個人の側から見ると、オーデスクやクラウドワークスなどに登録すれば、自宅で自分の都合に合わせて仕事ができる。たとえば、子育て中の主婦が育児や家事の手が空いた時間だけ仕事をすることができるし、1人の人間が複数の会社の仕事を掛け持ちすることもできる。ある意味、誰もがフリーエージェントになれるということであり、これがネット社会が可能にした新しい働き方なのだ。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号