今年も国会閉会後からこの8月にかけて衆参合わせて107人の国会議員が海外視察に参加した。繰り返し批判され見直しが叫ばれた国会議員の海外視察だが、この夏の旅行を検証すると、彼らはまったく懲りていない。
典型的なのが、各委員会の担当分野にかこつけて観光名所をめぐるパターンである。日本文化を海外に発信する「クールジャパン」政策とIR(統合型リゾート)政策を担当する内閣委員会の6人がインドネシア、シンガポールなどを訪れたケースを見てみよう。
衆院事務局によると、名目は「東南アジア各国及びインドにおける経済政策等実情調査」。7月20日、15時40分にインドネシアの首都ジャカルタに到着した一行がまず向かったのは市中心部にある「JKT48シアター」だった。視察現場に居合わせた関係者が語る。
「議員の皆さんはライブの途中から入り、最後までいらっしゃいました。ライブ終了後、メンバーと記念撮影もしていました」
秋以降に視察報告書が公表されるが、そこに「JKT48との記念写真」が掲載されるのか注目だ。その日は現地の日本企業関係者などを交えた夕食会の後、市内の高級ホテルに宿泊。
翌日は午前中から日系企業関係者と意見交換などを2件こなしたあと、郊外のショッピングモールを訪れた。そこではテナントとして入居する讃岐うどんチェーンの丸亀製麺や日本の居酒屋を「視察」。そして夕方からシンガポールに移動し、カジノリゾートとして有名な「マリーナ・ベイ・サンズ・ホテル」に宿泊した。
視察団の自民党の柴山昌彦・代議士は、フェイスブックでこう綴っている。
〈いよいよシンガポール入り。マリーナ・ベイ・サンズ・ホテルに併設されたカジノの視察と実体験を行いました。国際会議や観光客の誘致が設置後飛躍的に伸びたことや、利用者の登録など慎重な手続をとっている様子がわかりました。1時間ルーレットを楽しみ、5シンガポールドル(400円強)の負け〉
同ホテルの社長室長からカジノに関するレクチャーを受けたほか、23日にはシンガポールの社会家庭振興省、カジノ監督庁からギャンブル依存対策やカジノ犯罪について話を聞いているから、ただカジノで遊んだだけではないという理屈のようだ。ヨーロッパの視察に帯同したことのある衆議院職員が語る。
「国会議員の海外視察が物見遊山ではないかと批判された数年前からは、なるべく現地の関係省庁や企業関係者などとの意見交換をセットするようにしています。その分、観光するような自由時間は減っていてけっこう忙しくなっていますよ」
だが、そもそも本当に必要な視察なのかは甚だ怪しい。観光の言い訳として現地の関係省庁にわざわざ時間を取ってもらっているとしたら、訪問国にとっても迷惑な話である。
※週刊ポスト2014年8月29日号