夏休みの日本列島を襲った台風11号は、各地に甚大な被害をもたらした。ゆっくりとした速度で進み、各地に大雨をもたらし、高知県では降り始めから1000mmを超す降水量を記録する地域もあった。浸水などによる住宅被害は3680件に及び、死者1名、負傷者77名の人的被害が出た。
だが、台風シーズンの本番はまだこれから。9月にかけて、11号とは比較にならないほど巨大な台風が日本を襲う可能性があるという。
「台風が発生・発達するには海面水温が28℃以上あることが条件といわれています。台風11号が通ったルートの四国や九州の南海上の海面水温は29℃くらいありました。海面水温は依然として高い状態が続いているので、8月下旬以降、より大規模な台風が上陸する可能性は充分あります」(気象予報士の森田正光さん)
とくに懸念されるのが地球温暖化による影響だ。森田さんが続ける。
「今年は年初からエルニーニョ現象が始まるといわれていましたが、始まっていない。エルニーニョが始まると東部太平洋の海面水温が高くなり、西部太平洋の海面水温が下がりますが、今年は海面水温が全部高いんです。断定はできませんが、温暖化によるものと考えるのが妥当でしょう」
地球温暖化により、この100年間で海面水温は平均0.51℃上昇したといわれる。とくに日本近海では1.08℃と上昇幅が大きい。海面水温が高くなれば、強い上昇気流が生まれ台風のエネルギーもそれだけ大きくなる。つまり、日本近海ではより大型の台風が発生しやすくなっているわけだ。
気象研究家の幣洋明(へいひろあき)さんはこんな可能性を指摘する。
「今世紀末には800ヘクトパスカル台、最大風速80mに達する極めて強い『スーパー台風』が日本に上陸するだろうといわれています。でも、今のペースで温暖化が進めばそれがもっと早まる可能性がある。実際に過去にも800ヘクトパスカル台の台風はありました。幸いそれらは日本に来るまでに途中で勢力が衰えました。しかし、最近は日本近海の海面水温が高いので、衰えるどころか勢力を増してやってくることも充分考えられるのです」
5098名の死者・行方不明者を出した1959年の伊勢湾台風は上陸時の中心気圧929ヘクトパスカル、最大風速は70m(秒速)だったとされる。もし800ヘクトパスカル台の台風が襲来したら、どれほどの被害が出るのか。
国の中央防災会議は2010年4月、3037名の死者・行方不明者を出した1934年の室戸台風級(上陸時の中心気圧911ヘクトパスカル。最大風速60m以上)が東京湾を襲うことを想定した被害シミュレーションを発表した。それによると、台風の高潮による死者は最大7600人。浸水予想地域には約140万人が住み、家屋や商業施設に大きな被害が出る恐れがあるという。
東京都中央区、港区、江東区、神奈川県横浜市、千葉県浦安市などでは、浸水の水深が5m前後にも達し、最大約80万人が孤立。さらに利根川や荒川の氾濫により、首都圏の電気、ガス、上下水道などのライフラインにも甚大な被害が発生するとした。
だが、襲ってくるのが室戸台風を遥かに超えるスーパー台風となれば、被害はこの数字を遥かに上回り、首都は壊滅状態に陥ってしまうかもしれない。
※女性セブン2014年9月4日号