日本に上陸の危険性があるという800ヘクトパスカル台、最大風速80mに達するスーパー台風。では具体的に、スーパー台風が巻き起こす風速80mの風とはどれほどのものなのか。気象研究家の弊洋明(へいひろあき)さんが説明する。
「木造住宅なら屋根が吹き飛び、1枚でも窓ガラスが割れればそこから風が吹き込んで内部がメチャクチャに破壊され、家屋が倒壊する可能性もあります。樹木が根こそぎ倒れ、車も吹き飛ばされて横転します。高層ビルでは、窓ガラスが破れてそこから猛烈な暴風が吹き込み、その圧力でその階は壊滅的打撃を受ける危険性さえあります」(幣さん)
さらに心配されるのが、中央防災会議のシミュレーションにもあった高潮による被害だ。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんは高潮のメカニズムをこう説明する。
「台風が接近すると気圧が下がるため、海面が上昇します。1ヘクトパスカル下がると、約1cm海面が上昇するので例えば1000ヘクトパスカルだった場所に中心気圧950ヘクトパスカルの台風が来たら、台風の中心付近では海面は50cm高くなる。これが『吸い上げ効果』で、もし800ヘクトパスカル台の台風が直撃したら1m以上も海面が上昇することになります」(渡辺さん)
また、強風が沖から海岸に向かって吹くと、海水が海岸に吹き寄せられて海岸付近の海面はさらに上昇する。これを「吹き寄せ効果」と呼び、吹き寄せによる海面上昇(cm)は風速(m/s)の2乗に比例するとされている。
「風速が2倍になれば海面上昇は4倍になる計算です。とくに南西に向かってV字型に開いている湾の場合、巨大台風が西側を通過した際に南風による吹き寄せ効果で海面上昇はより増幅されます」(渡辺さん)
東京湾、伊勢湾、大阪湾はまさに南西に向かってV字に開いている地形のため高潮には最大限の警戒が必要だという。
さらに「段波」と呼ばれる高波も襲ってくる。段波とは、台風の強烈な風によって高さの違う波が連続して押し寄せてくるもので、普通の高波よりも大きなエネルギーを持つ。昨年11月、台風30号によってフィリピンで6000人超の犠牲者が出たのも、段波が海岸線を襲ったことが大きかったという。
日本の場合、堤防の整備が進んでいるためフィリピンほどの被害はないと考えられるが、「堤防が老朽化している場所では安心できない」と渡辺さんは指摘する。
※女性セブン2014年9月4日号