最近、ハリウッド映画で中国の存在感が際立っている。その大半は中国の歴史や文化、経済や産業の発展ぶりをストーリーの背景にあえて使う、好意的なものだ。
在ロサンゼルスのジャーナリストである高濱賛氏が、米国人監督が制作したという「尖閣は中国領」の宣伝映画の裏事情についてレポートする。
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3月11日夜、ハリウッドとは目と鼻の先にあるビバリーヒルズの映画館で招待客だけの上映会が開かれた。
上映されたのはドキュメンタリー映画『Diaoyu Island:The Truth(釣魚島の真相)』。「羊頭狗肉」も甚だしい映画で、8割は釣魚島(尖閣諸島の中国名)とは無関係な旧日本軍の残虐行為がこれでもかとばかりに繰り返される。
既存の映像と写真ばかりで「中国サイドが提供したとしか思えない」(映画を見た日本人商社駐在員)。しかもクレジットなしの無断借用で、反日宣伝映画そのものだという。
制作したドイツ系アメリカ人のクリス・ネーベ氏(78)は、カメラに向かい「釣魚島は古代から中国のものだった。それを日本は掠め取ったのだ。アメリカ政府は日本に同島を速やかに中国に返還し、謝罪させるべきだ」と主張する。
この映画を見た、かつて北京の米大使館に勤務した経験を持つ米国務省OBはこうコメントしている。
「この映画を上映する米国内の映画館はないだろう。The Truthと銘打った映画は往々にしてプロパガンダか、共同謀議か、嘘のどれかだ。
この映画の制作者はかつて『チベットは中国の一部だ』と主張する映画を作るなど親中映画を手がけている。それでも本人は中国から一切カネをもらっていない、自分たちの信念から映画制作をしていると言っているが……」
今のところ、ここまで中国政府“ご用達”のハリウッド映画はないようだが、
「ハリウッド界隈には零細スタジオが何千とある。カネさえ貰えば何でもやる制作者はいるはず。今回の件で味を占めた中国政府が恥も外聞もなく、第2、第3のネーベをスカウトしようとしても不思議ではない」(ハリウッド業界専門紙記者)
※SAPIO2014年9月号