2002~2003年に日本排尿機能学会によって行なわれた排尿に関する大規模な疫学調査で、加齢とともに排尿障害の症状を有する男性が増加することがはっきり示された。
排尿障害の中でも、明確な定義があるのが頻尿だ。日中起きている時の尿の回数が8回以上なら「昼間頻尿」、睡眠を中断する尿の回数が1回以上なら「夜間頻尿」とされる。
●夜間頻尿
40代:44.0%
50代:61.8%
60代:83.8%
70代:91.2%
80代以上:96.6%
メカニズムは後述するが、「勢い」「キレ」にも同様の傾向がある。
●尿勢低下(週に1回以上、排尿の勢いが悪くなったと感じる人の割合)
40代:19.1%
50代:30.5%
60代:42.9%
70代:52.1%
80代以上:55.4%
●残尿感(週に1回以上、排尿しても尿が残っていると感じる人の割合)
40代:18.9%
50代:22.8%
60代:28.3%
70代:31.9%
80代以上:41.4%
尿は腎臓で作られ、膀胱に送り込まれる。尿が流れ込むと膀胱は緩んで膨らみ、出口である尿道を収縮させて尿を蓄える。ある程度の量が溜まれば、脳に信号が送られ、膀胱が縮み、尿道が緩められ、体外に排出されるというのが排尿の仕組みだ。
尿の回数が多くなる主な原因は、膀胱の蓄尿量が減ることにある。日本排尿機能学会理事長で、山梨大学大学院医学工学総合研究部泌尿器科学教授の武田正之氏が語る。
「若い時の膀胱はよく伸びて膨らみやすいが、年を取ると皮膚の弾力性が失われるのと同様に、膀胱の伸展性が低下し、尿を蓄えられる量が減る。そのため、1回の排尿量が減り、回数が多くなる」
一方、「勢いがなくなる」、「キレが悪くなる(残尿感)」の原因には、「脳の老化」が関係する。脳の神経細胞は20歳以降、1日に10万個死滅し、90歳になるまでにピーク時から半減するといわれる。東京都リハビリテーション病院診療部長で、東京慈恵会医科大学准教授(泌尿器科)の鈴木康之氏が解説する。
「膀胱や尿道の弛緩、収縮は脳にある排尿中枢によって行なわれており、その仕組みは非常に精密にできている。それが加齢に伴なう脳の委縮による機能低下によって、膀胱や尿道からの情報、それに対する脳からの指令が伝わりにくくなるため、頻尿や尿勢低下、残尿感などの症状が出てくる」
※週刊ポスト2014年9月12日号