子供の遊び場というだけでなく、大人の憩いの場でもある街の公園が何とも息苦しい場所になっている。近隣住民からの苦情により、根本的な問題に目を背け、問題が出るたびに規制するという“対症療法”を続けた結果、公園には付きもののあるものが姿を消し始めている。子供たちが使う「遊具」だ。
2000年代、子供が向かい合って乗る箱ブランコで転倒事故が多発し、全国で撤去の動きが加速した。現在、国交省が作った安全指針の基準では箱ブランコはアウト。「好ましくない遊具」に回転式ジャングルジムや、遊動円木(太い丸太の両端を、鎖によって地面すれすれに吊り下げた大型の遊具)などが指定されている。
市区町村が管理する児童公園の場合、箱ブランコは約10年前の7分の1に激減、回転塔やジャングルジムもほぼ半減した。“健在”なのはブランコや滑り台くらいで、なぜか代わりに増えているのは、ぶら下がり棒などの「健康遊具」である(国交省調査より)。
東京・中野区の区議、小宮山たかし氏は過剰な“安全対策”に疑問を呈する。
「中野区のケースでいえば、経年劣化や安全性の問題により木製アスレチックなど昔からあった遊具が次々と撤去されています。一方で、新設の公園には遊具が一切ありません。
作ったとしても、滑る部分が1メートルほどしかない滑り台が置かれるくらい。滑ろうと上に腰掛けると、小学生でもあっという間に足が地面に着くような代物です。アリバイ的に遊具を設置してごまかしているのでしょう。これでどうやって遊べというのか」
そしてこう続けた。
「安全性の確保は大事ですが、昔からある遊具は子供の運動能力や危機察知能力を伸ばすという点で有益なものだったはず。すでにあるものを活かすための改善策を考えずに、すべて規制してしまうことは決して良いとは思えません」
昔は小川があって水遊びが楽しめた公園が、O-157騒動でポンプを止めて涸れたままという例もあるという。
何でもすぐに「禁止」する背景には、役人特有の事なかれ主義がある。問題が起きて自分たちの責任になることを何より恐れ、住民の利便より苦情を先に考える。役所にとって公園は「住民のもの」ではなく、「自分たちのもの」という勘違いもあるのではないだろうか。
さすがに、最近では親子でキャッチボールやサッカーくらいしてもいいではないかという住民の声に押され、東京・千代田区のように監督指導者や時間制限など、条件付きでボール使用OKの公園を増やす取り組みを始めた自治体も出てきてはいる。
あれも禁止、これも禁止、そのうえ広場には何もない。そんな場所はもはや公園とは呼べない。
※週刊ポスト2014年9月12日号