1946年の放送開始以来、約70年の長きにわたって放送されている国内随一の長寿番組『NHKのど自慢』(NHK総合、毎週日曜12時15分~ほか)。いつの世も国民を元気づけてきた人気番組で2002年から約12年間、全国の“のど自慢”たちに合否の鐘を鳴らし続けているのが秋山気清さんだ。番組の代名詞ともいえる、あの優しい鐘の音。彼の仕事ぶりを取材すると、『のど自慢』が長年愛され続けている理由が見えてきた。
毎週日曜日のお昼12時15分、誰もが知るあの鐘の音が高らかに鳴り響く。オープニングテーマとともに手拍子を叩きながらステージへ向かう出場者。ご自慢の歌は合格かどうか――すべてを告げるあの鐘の主こそが、番組の顔でもある鐘奏者の秋山さん。
「番組の顔? とんでもないですよ!」
人懐っこい笑顔を見せる秋山さん。年に東京芸術大学を卒業、これまで東京交響楽団、同大フィルハーモニアといった名楽団のオーケストラ団員として活動してきた音楽界のエリートだ。
年に『のど自慢』の鐘担当になる前に、知人を介して文字通り“代打”をすることがあった。しかし前任者が病気で亡くなってしまうという予期せぬ事態に直面し、そうしたこれまでの縁もあり、秋山さんに次のバトンが渡されることとなった。
「知らないかたも多いと思うんですが、私は別の審査室からイヤホンを通して送られてくる指令に従って鐘を叩いているだけで、合否の判定をしているわけではないんですよ。ただ、“えっ? 今の人が鐘2つ?”とか“今のは3つあげてもいいでしょう”とか思うことはあるので、そこはリズムを少しずらしたり、ちょっと反抗的な叩き方をしているときはあります(笑い)」
現在は楽団も引退し、仕事は『のど自慢』だけ。生放送前日の土曜日から現地入りしているため、平日休み、土日仕事というサラリーマンとは正反対の生活リズムだ。
「出場者の歌を聴いているときは、“あがらないでね”とひそかに祈っています。番組上、合否を決めなきゃいけないけれど、本当はみなさんに合格の鐘を鳴らしたいんですよ。『のど自慢』はコンクールではありませんから。明るく楽しく元気よく。誰もが楽しめる番組であってほしいですね」
そう語る秋山さんの姿から、長年愛される国民的番組の真髄を見た。
※女性セブン2014年9月25日号