コンビニの「冷凍ラーメン」が猛スピードで進化を遂げている。専門店に近い風味や食感が、1人前100~200円の安さで手軽に楽しめるとラーメン通の間でも注目の的だ。冷凍ラーメンブームはなぜ起きたのか。ラーメン業界に詳しいフードジャーナリスト・はんつ遠藤氏が解説する。
「うどんの冷凍商品は以前からありましたがラーメンは温度変化に敏感なかんすい(中華麺独特のコシ、風味を出すためのアルカリ性水溶液)が入っているので風味を損なわずに冷凍することが難しかった。
しかし真空状態で瞬間冷凍する技術が向上したため、風味を残すことができるようになってきました。レンジで加熱するだけで本格的な味が楽しめるとあって、急速に売り上げを伸ばしています」
家庭で調理する従来のインスタントラーメンは麺を油で揚げたり、フリーズドライにするなどの製法を使っていたため、どうしても風味が落ちてしまった。それが近年では生麺の冷凍技術の進化により中華麺本来の味が保たれるようになってきたというのだ。
そこまでレベルが上がったということで、行列のできる人気店店主に、コンビニ麺を使って専門店を凌ぐ本格ラーメン作りに挑戦してもらった。
快く応じてくれたのは東京都千代田区の人気ラーメン店「ソラノイロ」の店主・宮崎千尋氏だ。同店はキノコや野菜をふんだんに使った「ベジソバ」が話題で、平日の昼時には店の前に行列ができる。宮崎氏には冷凍つけ麺を使ったレシピを考案してもらった。
「今回、依頼を受けて初めてコンビニの冷凍つけ麺を食べましたが、1人前200円以下であることを考えると、驚異的なクオリティの高さですね。プロもうかうかしていられません」
宮崎氏はそう笑いながら、調理時間わずか5分で手際よく「トマトチーズベーコンつけ麺」を作ってみせた。こちらも食材はすべてコンビニで調達できる。
ポイントは濃縮つけダレを100ccの熱湯で溶いた後に、60ccのトマトジュースを加えること。
「ジュースの塩分とコクがつけ汁の味に深みを与えます」(宮崎氏)
レンジで麺を温めて冷水で締めた後は、スライスベーコンもレンジで加熱して麺の上に載せる。
その後にトマトジュースが入ったスープを電子レンジで30秒ほど温め、そこにスライスチーズを2枚浮かべてブラックペッパーをふりかけたら完成だ。宮崎氏がアドバイスする。
「スープをレンジで温め直すのを忘れないでください。そうすることでスライスチーズが溶けやすくなり、麺とよく絡むようになります。食べる時はベーコンで麺をくるみ、つけダレに浮かせたチーズを絡めるとより一層美味しくなります」
トマトとベーコンとチーズが麺とともに口の中で絡み合う濃厚な一品だ。
※週刊ポスト2014年10月3日号