ビジネス

GPIFによる日本株買い 企業で言えば粉飾決算のようなものか

 景気悪化に伴い株価下落が想定されていた日本株が持ち直した背景には何があったのか。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍し、巨額の報酬を得た後に退社した赤城盾氏が解説する。

 * * *
 甘く見ていた消費増税によるダメージの深さが徐々に明らかになる中、5月下旬の金融政策決定会合でも、市場関係者の切望する追加緩和は見送られた。頼みの綱を失った日本株は、将に底が割れる瀬戸際に追い込まれたが、なぜか急上昇に転じた。市場では、株価を内閣支持率の指標と考える官邸の強い意向を受けて、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が強力な買いを入れたのではないかと噂された。

 それが本当ならば、政権与党が、人気取りのために、実質的な国費を投じて株を買わせたことになる。株式市場は経済のもっとも優れた先行指標であるから、政府がその動向に気を配ること自体はまことに結構な話である。しかし、操作を試みるのは、企業にたとえていうならば粉飾決算で、極めて危険な発想といわざるを得ない。

 実弾を撃つ他に株価を支える手立てが見つからなかったのであれば、いよいよアベノミクスの賞味期限も切れたと白状したようなものだ。

 株買いの秘密指令が本当に出たのかは知る由もないが、安倍晋三首相がGPIFの運用見直しの前倒しを指示したことは確かに報道された。当面の下値は限定されると見た投機筋は、とりあえず先物などの売り持ちを買い戻す。もろもろの年金基金は先んじて株式のウェイトの引き上げに動いたであろう。

 ともかく、市場の雰囲気は一変したのであったが、それでも、日経平均株価は、昨年末につけたリーマン・ショック後の高値1万6291円にまだ及ばない。2014年の前半は、史上最高値を何度も更新したアメリカなど世界の株式市場の中で、日本株のパフォーマンスは際立って低調であった。

※マネーポスト2014年秋号

関連キーワード

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト