9月27日、長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)が噴火し、登山客ら51人が死亡した(10月5日現在)。噴火の約2週間前となる9月10日昼頃から火山性地震が増加し、同11日には85回発生していた。1日の発生回数が80回を超えるのは2007年に小規模な噴火が起きた時以来だった。気象庁はこうした情報をリアルタイムで地方自治体に伝えているが、自治体任せで登山者のほとんどが知らなかった。
ここではっきりさせておくべきなのは、いくら「お上」を頼りにしてみたところで、「予知」などほとんど不可能ということだ。
今回の噴火に際して、国民をあ然とさせたのは気象庁の諮問機関である火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣・会長(東京大学名誉教授)の会見だった。
「予知に失敗したというかもしれないが、ある意味では仕方のない状態。われわれの火山噴火予知に関するレベルというのはまだそんなもの」
世界屈指の火山国である日本では1974年に火山噴火予知連絡会が設置され、国土地理院に事務局を置く地震予知連絡会(1968年設置)と並んで国策としてカネがつぎ込まれてきた。
火山と地震を合わせた研究関連予算は年間約217億円(2013年度)にのぼり、とくに東日本大震災が発生した2011年度は約459億円と大盤振る舞いされている。この20年間の総額は4000億円を超える。
噴火予知連は学識者や関係機関の専門家31人の委員で構成され、全国の火山活動について総合的に検討を行なうほか、火山噴火などの異常時には臨時に会議を開いて統一見解「火山の状況に関する解説情報」を発表する役割だ。
会長の藤井氏は東大地震研究所所長や日本火山学会会長を歴任し、政府の「中央防災会議」「富士山ハザードマップ検討委員会」「三宅島火山活動検討委員会」などの委員を務めて防災計画の立案に関わってきた。
その火山予知の第一人者であるはずの藤井氏に、「われわれの予知のレベルはそんなもの」といわれれば、「税金返せ」といいたくもなる。
※週刊ポスト2014年10月17日号