ビジネス

牛丼チェーン 人員確保の目処立たなければ低価格路線修正も

 残業族の空腹を満たしてきた牛丼屋の灯が消え始めている。牛丼チェーン最大手の「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは10月1日、店舗の約6割にあたる1167店で午前0~5時の深夜営業を休止した。その影響を受けて、今期の連結決算は上場以来初の13億円の赤字となる見通しだ。

 苦渋の決断の背景には、「アルバイトの決起」がある。すき家は深夜帯の営業で従業員1人で店内を切り盛りさせる「ワンオペ」と呼ばれる体制を敷いてきたが、その勤務の過酷さから退職者が続出し、一時閉店が相次いだ。そのため9月末までに複数勤務に切り替えることにしたものの、人が集まらず、休止を迫られたのである。

「今のところ人手確保の目途は立っておらず、深夜営業の再開時期は未定です」(ゼンショーホールディングス広報室)

 牛丼業界は今、時給を上げても働き手が集まらない状況だという。外食ジャーナリストの中村芳平氏が解説する。

「日本人はもちろん、中国人など外国人労働者も外食産業よりオペレーションが簡単なコンビニに流れています。すき家の場合、一度、過酷な深夜労働でブラック企業の烙印を押されたため、さらに募集を難しくしているのです」

 深夜営業を止めたのは、すき家だけではない。1972年に24時間営業を開始した業界2位の吉野家も利用客の需要が少ない店舗の深夜営業は減らす傾向にある(吉野家広報担当は「人手不足が原因ではない」と説明)。

 唯一全店24時間営業(ショッピングモールなどの店舗を除く)を続ける松屋は高価格路線に舵を切った。7月からの「プレミアム牛めし」(380円)発売に伴って、導入店舗では従来の「牛めし」(290円)の販売を終了し、事実上の値上げを始めている。前出・中村氏が指摘する。

「すき家を襲った人手不足に端を発し、各社とも人件費の上昇に悲鳴を上げています。そこで、松屋は牛丼のクオリティーを上げながら、利益を出しやすい価格に戻しました。今後、すき家や吉野家も人件費を抑えたまま人員を確保する見通しが立たない以上、低価格路線の修正を迫られることになりそうです」

 デフレ下で賃金を抑制してきたツケといえばそれまでだが、牛丼はサラリーマンの「深夜メシ」の代表格。値上げを受け入れるか、深夜営業を諦めるか─―どちらにしても庶民にとっては痛手となる。

※週刊ポスト2014年10月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

33年ぶりに唐沢寿明が鈴木保奈美と共演する
【地上波ドラマでは『愛という名のもとに』以来33年ぶり】唐沢寿明、2025年1月期で4年ぶり民放連ドラ主演、共演は鈴木保奈美 テレ朝は大きな期待
女性セブン
書類送検された自民・山口晋議員
《20代女性にキス》不同意わいせつ容疑で書類送検された自民・山口晋議員 地元住民が語っていた父・山口泰明自民党元選対委員長の“親ばか”ぶり
NEWSポストセブン
事件現場となったアパート
《東大阪・中高生3人誘拐》「事件の夜、女の子の怒鳴り声が」咳止めの市販薬を80錠使用して急性薬物中毒に…逮捕された男のアパートで目撃された“黒髪の女子学生“
NEWSポストセブン
一時は通常の食事がとれないほどだったという(7月、岐阜市。時事通信フォト)
宮内庁の来年度予算概算要求「医療環境の整備等」が約1.5倍に増額 “大腸ビデオスコープ”への予算計上で再燃する紀子さまの胃腸への不安
女性セブン
NHKの山内泉アナ
《極秘結婚していたNHK山内泉アナ》ギャップ感あふれるボーイッシュ私服は約9000円のオシャレブランド お相手は慶応同級生…大学時代から培った「ビビットな感性」
NEWSポストセブン
不同意わいせつ容疑で書類送検された山口晋衆院議員(Facebookより)
《不同意わいせつ容疑で書類送検》自民・山口晋議員、エレベーター内キス目撃した20代女性の母親に「ガス会社の社員」を名乗った理由
NEWSポストセブン
長澤まさみ
松本潤、野田秀樹氏の舞台で共演する長澤まさみを“別宅”に招いて打ち上げを開いた夜 私生活では距離があった2人がお互いを高め合う関係に
女性セブン
三田寛子がSNSに載せた初めてのツーショットの真相
《三田寛子の誕生日ツーショット》実は「バースデー当日の写真ではない」疑惑が浮上 中村芝翫は愛人と同棲する家へ直行していた
NEWSポストセブン
NHK・山内泉アナ(同社HPより)
《“絶叫アナ”が産休へ》NHK・山内泉アナが結婚していた!お相手は同級生の“慶應卒官僚”、「局内でも知る人は限られていた」極秘婚
NEWSポストセブン
妻とみられる女性とともに買い物に出かけていた水原元通訳
《買い出しツーショット》水原一平被告が痩せてロン毛に…購入した「米とビール」にみる現状の生活
NEWSポストセブン
斎藤元彦知事。職場外でも“知事特権”疑惑が(時事通信)
【まるで独裁者】兵庫県・斎藤元彦知事「どこでも仕事すべき」と論じるSNS投稿に映しだされていた「真っ白なGoogleカレンダー」
NEWSポストセブン
再婚発表に賛否両論
東出昌大、再婚の裏側 親しい知人への報告は「発表の直前」 “山暮らしの後輩女優”の1人はSNSで「勝手」と意味深なメッセージ
女性セブン