かつては駿台、河合塾と並んで三大予備校と称された代々木ゼミナールの経営が窮地に陥っている。なぜ代ゼミだけがこれほど失速したのかについて、大前研一氏が解説する。
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帝国データバンクが9月上旬、「学習塾・予備校主要35法人の経営実態調査」を発表した。それによると、少子化が進む中でも業績は横ばいを維持し、約8割の法人で3期連続の黒字となったが、大幅な校舎の閉鎖・集約が明らかになった代々木ゼミナールを運営する「高宮学園」は、2014年3月期の資産総額が前年度比で約74億円減少し、代ゼミの“一人負け”を裏付ける格好となった。
周知の通り、代ゼミは来年3月末で全国27校のうち20校を閉鎖し、全国の大学を対象とした模擬試験も廃止して東京大学や京都大学など主要大学別の模試と高校1・2年生対象の模試に絞り込み、40歳以上の職員を対象に早期希望退職を募集するという大リストラに踏み切った。
今回の代ゼミ経営危機では、少子化に伴う大学志願者数の減少や現役志向・国公立大学志向の強まりの影響と報じられている。だが、それらは突然起きたことではなく、徐々に起きた構造的な変化である。つまり、かなり前からそうなることはわかっていたのである。
なにしろ18歳人口は1992年の約205万人が2014年には約118万人に減少し、その一方で大学数は1992年の523校から2014年には781校に増えているのだ。この構造的な変化を代ゼミの経営陣は看過し、ここまでもったのが不思議なほど意思決定が遅れてしまったのである。経営としては“究極の失敗”だ。
日本は選り好みしなければ誰でも大学に入ることができる「大学全入時代」になったと言われて久しい。大学・短大の入学者数を大学・短大の志願者数で割った「収容力」は9割を超え、今春の入試では4年制私立大学の46%が定員割れとなった。1992年度は約35%だった「浪人率」が2013年度は約12%にまで減少している。これでは、私立大学志望の浪人生に重きを置いていた代ゼミが失速するのは当たり前だろう。
※週刊ポスト2014年10月17日号