2025年には団塊の世代が75才以上に、2038年には推計約170万人もの人が亡くなる“多死社会”のピークが来るといわれる。
「病院で死ぬ人が在宅死を上回ったのが1976年。40年前までは家で死ぬ人のほうが多かった。終末期を病院のベッドで過ごし、過剰な延命治療をすることが果たして本当に幸せなのか考えてほしいのです」
医師の長尾和宏さんは、穏やかな最期を迎える「平穏死」という考え方を提唱する。
「人が死に向かうときには、体の機能が徐々に落ちて終末期を経てから、やがて死を迎えます。終末期に食べ物を受け付けなくなるのは自然なこと。しかし、点滴で無理に栄養を入れ過ぎてむくみ、もがき苦しみながら亡くなるというケースも。医療の目的は命を延ばすこと。終末期以降も過剰な延命治療を続ける医療機関も少なくありません。
最期をどこで、どのように迎えるか、選択権は患者本人にあります。しかし認知症や意識不明で病院搬送された後など、意思表明が困難なことも多いのです。延命治療をどこまで希望するか、終末期医療の選び方によって、穏やかな最期を迎えられるということを知ってほしいと考えています」
※女性セブン2014年10月23・30日号