動物行動学を大学院で専攻し、『そんなバカな!』(講談社出版文化賞科学出版賞受賞)『女は男の指を見る』ほか多数著書のある竹内久美子さん(58才)。「動物のようにシンプルに生きたい」と願っている芸能界一の動物好きお笑いコンビ「ココリコ」の田中直樹さんが竹内さんと人間関係について話し合いました。
竹内:芸能界、とりわけお笑いの世界は、先輩・後輩の序列がはっきりしているって聞きますから、田中さんも後輩にあれこれお世話をしたりと、大変なんじゃないですか?
田中:確かに食事に行くと、先輩が必ず支払いをするというルールがありますね。でも、ぼくはそういう、「売れる・売れない」じゃなくて「芸歴」が大切にされるシステムが好きなんです。若い頃に先輩にご馳走してもらって、「自分もああなりたい」って頑張るモチベーションになりましたし、自分の後輩には、ご馳走しなきゃって思いますよ。
竹内:鳥の世界にも「ノブレス・オブリージュ(地位の高い者が負う責任)」みたいなものがあるんです。
集団で暮らすアラビアヤブチメドリの順位の高いオスは、順位の低いオスにエサを与える。そして夜、枝に一列になって眠る時は、外敵の攻撃から集団を守るために、リーダーとサブリーダーは危険な両端に陣取って眠ります。
田中:へぇ~!! リーダーの特権みたいなものはないんですか。
竹内:唯一、繁殖です。優先的にメスと交尾する。そこも…。
田中:おおむね一緒(笑い)。動物界は婚姻の形もさまざまですよね。人間に近いっていわれるチンパンジーは乱婚的じゃないですか。
竹内:そう、特定の夫婦関係がないんです。だからといって、年がら年中やってるかというと、そうでもない。チンパンジーは授乳期間が4年と長いので、一度子供を産むと、4年は発情しないんです。それで、一度発情すると、来る者拒まず交尾します。不思議なのは、私たち人間だと、女性は若いほうがモテますよね? でもチンパンジーは老いたメスこそモテるんです。
田中:そうなんですか‼
竹内:チンパンジーのメスは人間の女性と違い、死ぬ直前まで子を産み続けますし、年をとっているほうが子育て経験が豊富だからです。それから乱婚的であることには実は深い意味があります。ほ乳類の世界には「子殺し」という厄介な問題がある。
乳飲み子がいると、メスは発情しません。乳飲み子がいなくなると、乳を吸う者がいなくなるのでメスは発情するんです。チンパンジーが乱婚で、メスが多くのオスと交尾するのは、子の父親が誰かわからなくするため。もし「この子はおれの子じゃない」とわかってしまうと、そのオスは子を殺してしまうかもしれません。つまり自分の子を守るためにあえて淫らになっているんです。
田中:なるほど! 自分の子かも…と思えば、殺せないですもんね。
竹内:生きていくためにセックス(交尾)を利用するのは、人間も動物も同じということですね。
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※女性セブン2014年10月23・30日号