かつては「どこか怪しげ」「手続きが複雑」などといった印象を持たれがちだったインターネット上のオークションサイトだが、今や大手Yahoo!が運営する「ヤフオク」には、1日あたり100万件以上の様々な品が登場するようになった。
そうしたオークションサイトには、当然のことながら違法商品を出品することができないが、粗大ゴミとして出したタンスが持ち去られ出品された場合、これは違法なのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
タンスが不要になり、粗大ゴミのシールを買ってゴミ置き場に出したところ、翌日には回収日でもないのになくなっていました。もしやと思いネットを調べたら、オークションに出品されていたのです。これでは自分だけが損をしているようで納得できません。こういう場合、法的に問題はないのでしょうか。
【回答】
他人が支配する物を奪えば窃盗、他人が忘れたり落とした物を持ち去れば遺失物横領の罪になります。しかし、これらは財産犯ですから、ゴミとしてゴミ置き場に出された物に果たして財産犯として処罰するだけの財産価値が認められるか問題です。財産価値があるとしてもゴミとして出したのですから、遺失物横領の罪は成立しません。
次に、ゴミ置き場が他人の占有下にあるかが窃盗罪の成否をわけます。ゴミ置き場は住民や役所が管理しているため、その占有があるともいえますが、その一方、ゴミ置き場の資材などで生活を立てざるを得ない人もいます。
そのため野ざらし状態のゴミ置き場などでは、窃盗犯から保護されるべき占有があると断定するのに反対の意見もあります。とはいえ、ご質問の例のように、最近は経済価値のあるゴミが資源ゴミとして見直され、役所の依頼する正規の回収業者以外の業者がゴミ置き場などから無断で価値あるゴミだけを回収して、商売にすることが多発しています。役所の回収量は減るでしょうが、ゴミ回収計画が無駄になったり、ゴミ置き場の片づけが必要になったりと、かえってコスト増になりかねません。
また、廃棄物として適正に処理されたか確認できないことも問題です。そこで多くの自治体ではゴミ置き場からの持ち去りを禁止し、違反者にはその中止を命じ、従わないときは罰金を科することができる条例を定めるようになっています。世田谷区の清掃・リサイクル条例違反で、罰金を命じられた被告人が、ゴミの場所の特定が十分かという点で、最高裁まで争い退けられたケースもあります。
あなたはタンスをゴミとして出した以上、所有権を放棄しているので、個人的には何もいえませんが、役所と相談して対処を求めることは有効かもしれません。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年10月17日号