エボラ出血熱が「パンデミック(感染大爆発)」の様相を見せ始めた。多くの犠牲者を出してやっと、世界の製薬会社は重い腰を上げたようだ。
アメリカではテキサス州で死亡したリベリア人男性の治療に携わった医療関係者2人への感染が判明してパニックに。WHOは、現在1週間当たり1000人の新規感染者が12月には5000~1万人になるとの予測を発表している。
日本でも水際対策として空港などにサーモグラフィ(体温測定機)を設置し、アフリカの発生国からの訪日者については検疫所での健康確認を実施しているが、医療ジャーナリストの志村岳氏はこう指摘する。
「潜伏期間中であれば発熱症状なども見られず、サーモグラフィは簡単にすり抜けられる。発生国以外からの訪日者は検疫の網から逃れており、水際対策は不完全。エボラの日本上陸はいまや時間の問題といえます」
まさに爆発的に広がる中で注目されるのが「いつ特効薬が開発されるのか」だ。
「9000人程度の患者数では、開発に莫大なコストをかけても大した利益が見込めないため、世界の大手製薬会社は特効薬開発に前向きではなかった。だが、ここに来て状況は一変した」(大手製薬会社社員)
アメリカではベンチャー製薬会社マップ・バイオファーマシューティカル社が開発を進める未承認薬「ZMapp」に再び注目が集まっている。当初は投与された患者が回復して期待されたが、その後死亡例も相次ぎ、効果を疑問視する声があがっていた。
だが感染拡大を受けて米保健福祉省が2490万ドル(約25億円)をマップ社に拠出して効果の高い薬にするよう支援することを表明したほか、別の企業が生産拡大に協力することを発表して全米で「ZMappに賭ける」動きが広がった。他にもカナダの製薬会社が10月中旬にワクチンの治験を開始するなど、開発はにわかに動き出している。
もっとも、薬が普及するには時間がかかる。米政府に後押しされたZMappですら、「開発を加速する期間」を「1年半」としており実用化の目途は立っていない。
残念ながら商業主義で開発が遅れたことのツケは、「毎週1万人の感染」という形で支払わされることになる。
※週刊ポスト2014年10月31日号