スマートフォンの普及率が全世帯の62.6%となり、個人でみると20~29歳は83.7%になった。一方でパソコンの普及率はじわじわと減少し、20~29歳ではスマホを下回る78.8%だ(総務省「平成25年通信利用動向調査」調べ)。ふだん使う端末の影響だろう、若者は文字をフリック入力でつづり、キーボード離れがすすんでいる。
この現象は、偏差値60近い大学に通う学生でも事情は変わらない。
「同級生に、両手の人差し指でキーを探しながらキーボードをよちよち打っている人がいますよ。それでレポートも書いています。だからといってデジタル全般が苦手というわけじゃなくて、スマホだと両手でものすごく速くシュッ、シュッとやっているんです。そこまで極端じゃない人でも、私自身もキーボードよりもスマホのフリック入力のほうがラクですね」(都内の女子大学生)
神奈川大学非常勤講師で情報処理を教える尾子洋一郎さんも、教え子たちは総じてキーボード入力は面倒だと話しているという。
「情報処理を履修している外国語学部の学生にアンケートをとってみたところ、iPadを持っている学生がレポートの仕上げまですべてフリック入力だけで済ませていました。全体的には、約15%がふだんからレポートの下書きやメモとしてスマホを使っていて仕上げはPCでというパターンで、他はキーボードを使っています。といっても、ほとんどの学生がキーボード入力が得意な訳ではないので、講義では4月にタイピングソフトでローマ字入力の練習をしています。また、自主的にタッチタイプ練習ソフトで日頃からトレーニングするよう指示しています。
最近は、教員側が添付ファイルではなくメール本文でのレポート提出を指定するケースも増えてきていると学生から聞いたので、ますますキーボードではなくフリック入力ばかり使うようになるでしょうね」
19世紀初期からタイプライター用には様々なキーボードが開発された。たとえばアルファベットをABC順に並べたり、母音だけを抜き出して列を分けたものがあったが、どれもあまり普及しなかった。しかし1872年にQWERTY配列キーボードが発表され、それを搭載したタイプライターが量産され広まったことをきっかけに、現在の形のキーボードが入力デバイスとして使い続けられている。
しかし、スマホやタブレットの普及によって、この情勢は変わるかもしれない。Windowsが8.1からフリック入力に対応しているため、対応タッチパネル液晶ならPCでもフリック入力が可能になったからだ。また、Wi-Fi技術の広がりによっても変化がもたらされそうだ。