中野の古書店「まんだらけ」で、「鉄人28号」のブリキ製人形が万引きされた事件では、まんだらけがビデオカメラの画像を公開すると犯人に通告して物議を醸したが、万引き被害は店側にとっては死活問題だ。コンビニで小学生の万引きが多発したような場合、警察に通報するべきなのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
念願のコンビニを開店。ただ立地場所が小学校の裏手にあり、子供たちの万引き行為に困っています。先日も子供の万引き行為を発見したのですが、その子の将来を考え注意もできませんでした。しかし、月に2万円ほどの損害も出ていますし、小学生であろうと警察に通報したほうがよいのでしょうか。
【回答】
万引きは、いうまでもなく「窃盗」であり、刑法で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する」と定められている重罪です。青少年の万引きが頻発しており、小売業者は大きな被害を受けています。少額の商品であっても、生産し、販売する人の努力があって出来上がったもので、対価を払わず自分のものにすることは許されないことです。
小学生であっても、そのことを理解させるためにきちんと対処すべきであると思います。小学生ですから14歳未満になり、処罰されることはありません。しかし、物事の是非がわかる歳に達していれば、触法少年として少年法の適用があり、家庭裁判所の審判の対象となります。
こうした子供には、児童相談所、警察あるいは家庭裁判所が対処します。そして犯罪性があり、矯正の必要性があれば、保護観察所の保護観察の処分が下されたり、程度が特にひどい場合には少年院へ収容されることもあります。さらに少年法では、触法少年を発見した者に、家庭裁判所への通告義務を定めています。よって、見て見ぬ振りをすることには賛成できません。
子供の将来を考えて通報できなかったとのことですが、その優しい気持ちを維持されたいのであれば、まず親に連絡して注意を喚起すべきでしょう。また、児童を特定しない方法で万引きの証拠を添えて学校に事情を説明し、児童全般への生活指導を適切に行なうよう求めることも考えられます。こうした努力をしても万引きがやまない時には、警察か児童相談所に申し出るのがよいと思います。
なお、現場を押さえた子供に長時間説教などをするのは考え物です。親から監禁などとクレームをいわれる恐れがあります。悪質な子供はすぐに警察に連絡して引き渡すべきです。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年10月31日号