3年ぶり6回目の日本一を福岡ソフトバンクホークスが決めた2014年のプロ野球日本シリーズ。振り返ると、第3戦に備えて移動した阪神が前日公式練習を行なわないなど、阪神の戦略には疑問が残った。一方、第3戦で脚光を浴びたのが、7回をパーフェクトに抑え込んだホークスの左腕・大隣憲司の力投だった。
大隣はこの7月に一軍に復帰、7月27日に先発したオリックス戦で7回を投げ422日ぶりの勝ち星を挙げた。
「7月からしかチームに貢献できなかったが、感謝の気持ちだけでここまで投げてきた」と語る大隣の言葉に鷹ファンは涙を流して大喝采を送った。
その大隣に丸1年にもわたる空白を強いたのは、厚労省が特定疾患に指定している難病「黄色靭帯骨化症」だった。靭帯が骨のように硬くなって脊椎を圧迫する病気で、足の痺れや脱力症状が現われ、重篤な場合は下半身麻痺に陥ることもある。
一昨年の4月に診断を受けた大隣は、同6月に都内の病院で手術を受けた。この際に参考になったのは、同じ病気と闘っていた巨人・越智大祐のケースだった。大隣はかつての同僚である巨人・杉内俊哉を通して越智に相談、同じ病院で執刀を受ける。選手生命を絶たれる大ピンチから“復活”した陰には、元チームメートのサポートがあったのである。
もっとも、光り輝く一面があれば暗い影も差す。大隣に一筋の光を差した巨人・越智は、手術後、ファームで再起をかけ奮闘してきたが、今シーズンも一軍登録は一度もなし。ついに10月1日に球団から戦力外を通告された。
※週刊ポスト2014年11月14日号