10月24日、市長選(11月16日投開票)モードに突入した愛媛県松山市の市民会館大ホールに2人の疑惑大臣が顔を揃えた。
本誌がスッパ抜いた「口利きメール事件」の塩崎恭久・厚労相と「ファミリー企業還流疑惑」の西川農水相だ。塩崎氏の疑惑は松山市の特別養護老人ホームの開設に際し、塩崎厚労相の秘書が厚労省担当者に口利きを依頼した疑惑である。
西川農水相の疑惑は、息子が社長を務める親族企業「NA企画」、親族企業で自身も大株主の「新西建材工業」に3年間で「お歳暮代」などとして計100万円近くを支出していた問題だ。
市長選は再選を目指す現職市長と、地元選出の塩崎氏が擁立した元経産官僚の事実上の一騎打ち。塩崎系新人候補の応援演説で西川農水相は、4000人の聴衆を前にこう言い放った。
「必ず当選させて下さいますように。これがなかったら農林水産業の予算つきにくいからね。(予算を)減らすとはいわない。つきにくい。そういうことでございまして、皆さんにお願いをしてご挨拶にさせていただきます」
農水大臣が農水予算と引き替えに票を出すように露骨に要求したのである。望月氏や小渕氏のように“現物”をバラ撒くのではなく、こちらは利権=予算で票を買おうという自民党得意の手法である。が、こんなに下品にわかりやすくいう間抜けな大臣は珍しい。
さすがに本誌に「口利き」を追及されている塩崎氏は、あからさまに地元への利益誘導を表明することができなかったとみえて、“利権屋仲間”の西川氏を連れて来たということだろうか。
これはもう安倍・自民の体質そのものだ。首相が大臣を何人交代させようと、疑惑が絶えるはずはない。
いま表面化している政治資金疑惑は、2009年の総選挙で自民党が政権を失い、落選議員が大量に生まれ、政治献金も細って息絶え絶えだった野党時代のものだ。
当時、自民党は「自民党自身が生まれ変わる」(谷垣禎一総裁=当時)と約束したはずだったが、野党時代の自民党議員たちは、小渕優子前経産相のような「買収」工作や、政党助成金のネコババに励んでいたのである。
それが民主党政権の敵失で苦もなく政権に返り咲いたのだから、どこを切っても疑惑だらけなのは仕方ないのだ。
※週刊ポスト2014年11月14日号