文房具の市場規模が2008年度から2012年度までに10%も減少するなか、出荷額を増やし続けているのがパイロットの万年筆「カクノ」だ。50万本という驚異的な数を売り上げた「カクノ」は、日本初の本格的な子ども向け万年筆というコンセプト。作家の山下柚実氏が、パイロットコーポレーションを訪れた。
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「まさかこんなに売れるとは。私たちも意外でした」と開発を担当した同社営業企画部・斉藤真美子さん(41)は開口一番、そう言った。
「当初は月1万本程度売れればと考えていたんですが、発売したとたん注文が殺到し、一時は品切れになりご迷惑をおかけしてしまいました」
2013年10月の発売から9か月経過した時点で、販売数は50万本を突破。
「この勢いでいけば100万本も夢ではないと思います」
注目のこの万年筆、価格は1000円と安い。万年筆は通常、安いものでも3000円程度。同社の売れ筋は金製ペン先を使った1万円クラスの商品だ。
「今回の開発テーマはまさに『低価格』にありました。1000円の万年筆を作る、ということは弊社の長年の課題として追究してきたテーマでした」
なぜ、低価格製品なのか。そのヒントは万年筆の「使用経験」にあった。同社が8000名を対象に実施した調査によると、50代の男女の9割以上が万年筆を使った経験があると回答。一方で、20代のなんと半数以上が、使ったことがないと判明した(「万年筆に関する実態調査」2012年)。さらに興味深いことが見えてきた。
「万年筆が欲しい、と考えている人が最も多い世代は、意外にも20代でした。若い人が抱く万年筆のイメージは、オシャレ。肯定的なんです。ところが購入していない。理由は、価格と、使い方がわからないことにありました」
同社の狙いは、「関心はあるが使ったことのない」新しいユーザーを掘り起こすことにあった。