第二次世界大戦の終結から70年となる来年に向け、中国政府は抗日戦争勝利の記念式典に各国の参加を呼びかけるなど対日包囲網を形成している。一連の対日包囲網形成において中国が“利用”する筆頭はやはりあの国だ。評論家の室谷克実氏が解説する。
「中国は朴槿恵政権の対中すり寄りを巧みに利用し、韓国を“手下”として利用しようと画策しています」
その象徴が中国・西安の「光復軍記念碑」である。
昨年6月、訪中した朴槿恵大統領が習近平に安重根記念碑と、抗日部隊である「光復軍」の司令部跡地整備を要請。習近平が「快く」これに応じ、今年5月29日に光復軍記念碑の除幕式が行なわれた。
高さ1.8メートル、幅1.1メートルの記念碑には中国語と韓国語で「中韓国民が共に日本の帝国主義の侵略と圧迫に立ち向かって闘った歴史を記念する」と刻まれ、「反日タッグ」の二人三脚ぶりを強調した。
なおも中国は手綱を緩めない。今年7月の訪韓時、ソウル大学で講演した習近平は400年以上前の豊臣秀吉の朝鮮出兵を例に出し、「文禄の役で(中韓)両国民は肩を並べて戦場に向かった」と述べ、「日本の軍国主義者は、中韓に対する野蛮な侵略戦争をしかけ、朝鮮半島を併合し中国の半分を占領した」と語った。さらに光復軍の記念碑について、「忘れがたい歴史を証明している」と強調して反日勢力を煽り、韓国民を喜ばせた。
しかし、この記念碑はまったくのデタラメの産物である。韓国が日本の統治下にあった1919年、朝鮮独立運動家らによって上海に大韓民国臨時政府が設立された。この亡命政府の武装組織として1940年に創設されたのが光復軍だ。
光復軍は蒋介石率いる中国国民党の援助を受けて活動したが、実績は皆無に等しい。
「中国共産党と共闘して抗日戦争を戦ったのは金日成将軍の朝鮮人パルチザンであり、蒋介石の寄生虫のような軍隊だった光復軍は日本との戦闘経験すらありません。中韓は歴史を捏造してまで記念碑を建設し、反日思想を世界にアピールするのです」(室谷氏)
この流れで当然、中国は韓国に戦勝式典への参加を促すことになり、韓国は追随することになるだろう。
「現在、韓国の外貨預金残高の3割を中国の人民元が占めています。さらに貿易立国である韓国の輸出額の4分の1を中国が占める。つまり、韓国は中国に経済的に首根っ子を押さえられているということです。朴槿恵の本音が日本との関係改善だとしても、中国のペースに巻き込まれており、もう抜け出せない。結局は中国の呼びかけに応じ、記念式典を中韓両国で行なうことになるでしょう」(室谷氏)
※SAPIO2014年12月号