この10月に中国の天津で開催された「北東アジアの平和と発展に関する国際会議」(中国国際問題研究基金会主催)に、日本代表として出席したときに、こんな出来事があった。
会議には主催国の中国のほか、韓国、ロシア、日本、モンゴル、そしてアメリカなどの閣僚クラスの政府要人や、大学の研究者、経済人が参加し、東アジアが直面する課題を議論したのだが、中国の北京大学と韓国の延世大学の研究者から、日本の安倍首相の歴史認識は間違いで、彼は歴史修正主義者であるとの批判が飛び出し、相変わらずの日本の戦争責任糾弾が始まったのである。まるで中韓で共闘しているかのようだった。
これを放置するわけにはいかないので、私は「東アジアには食糧や環境、エネルギーなど多くのグローバルな問題が横たわっていて、日本は解決するための技術も価値観ももっている。だから、いつまでも過去を蒸し返すのではなく、未来を見据えたもっと前向きな議論をしましょう」と、国際協調の必要性を訴えた。
幸い、アメリカのシンクタンク、パシフィックフォーラムCSISのラルフ・コッサ理事長が、日本は20世紀の前半にアジアを蹂躙したのは確かだが、20世紀後半には平和と経済発展に尽力し、奇跡的なアジアの発展を生んだのも事実で、その成果を正当に評価すべきと援護射撃をしてくれた。
さながら中韓vs日米の対決のようだったが、結果的に議論は落ち着き、未来志向の話ができた。
もしここで私が反論していなければ、中韓の代表者らが好き放題に日本批判を繰り広げ、会議がおかしな方向へ進んでいても不思議ではない。
日本に関する偏向した情報が、各国の政府要人や研究者らに広まっていた可能性もあり、そう考えるとぞっとする。
●文/浜田和幸(国際政治経済学者・参議院議員)
※SAPIO2014年12月号