韓国・ソウルの繁華街、明洞(ミョンドン)。10月、雨にもかかわらず電気店に300人以上の行列ができていた。
彼らのお目当ては前月に発売されたサムスンの新型スマホ「ギャラクシーノート4」……ではなく、韓国に上陸したアップルの「iPhone6」。その様子こそ、サムスン不振の象徴だった。いま韓国では「ギャラクシー・ショック」が経済を揺るがせている。
10月に発表されたサムスン電子の2014年12月期第3四半期決算では、営業利益が4兆605億ウォン(約4300億円)で前年同期比60%減。純利益もほぼ半減と業績に急ブレーキがかかった。その主な原因が、「ギャラクシー」の不振なのだ。
サムスン電子に灯った黄信号は、韓国最大の財閥、ひいては韓国経済全体に大きな悪影響をもたらしつつある。在韓国ジャーナリストの藤原修平氏が語る。
「サムスンの関連会社の多くがギャラクシーに依存してきました。スマホ向けカメラを供給してきた『サムスン電機』は、2014年第3四半期決算で691億ウォン(約72億円)の赤字に転落。
バッテリーなどを生産する『サムスンSDI』は営業利益が前年比71%減と苦境に陥りました。それら系列企業は生産量の6割以上をサムスン電子に納入してきただけに成長も早かったが、ギャラクシーが不振に陥ると一転、危機に直面したわけです」
早くもサムスングループでは大規模リストラが近いとの噂が出ている。系列企業では経営を立て直そうと、スマホ以外への部品供給を模索する動きも出始めた。
だが、それも簡単ではない。カブドットコム証券マーケットアナリストの山田勉氏はこう指摘する。
「ギャラクシーは小米や華為のような中国メーカーのスマホに価格競争力で負け、急速に市場でのポジションを失っています。
スマホに並ぶサムスンの強みは半導体で、それを売り込む市場を新たに開拓しようとしていますが、立て直しは一筋縄ではいきません。同じようにエレキで苦しむソニーは金融や映画といった収益源を持っていますが、サムスンにはそれもない」
サムスン電子がくしゃみをすればグループ全体が風邪を引き、韓国経済が高熱にうなされる。無理な急成長のツケがいよいよ回ってきた。
※週刊ポスト2014年11月21日号