このところ台湾の大学や研究機関に留学する中国大陸の学生が増えている。それに伴い、台湾の情報機関が留学生の出身家庭を調査し、中国共産党や政府、中国人民解放軍の幹部を両親にもつ学生を個別に呼び、中国の内部情報を聴取するケースが多くなった。これに対し、中国政府機関が台湾側に抗議していることが分かった。中国共産党機関紙「人民日報」系の国際関係紙「環球時報」が報じた。
台湾では2009年以降、中国大陸の留学生の受け入れを解禁、年々、その数は多くなっている。2012年だけで1万1000人で、全体では約3万人に上る。
このなかには、両親が共産党や政府、軍の幹部である者も含まれており、台湾の情報機関である国家安全局や台湾国防省軍事情報局、法務省などの機関が個別に調べ上げ、データを作成。
これらの情報機関員が2009年から2013年にかけて、台湾内の約20大学で留学生にアンケート調査を実施し、中国内の内部情報を収集したという。また、留学生には将来的に中国共産党・政府、軍事関係の機関に就職するよう勧めているという。
中国教育省当局は、こうしたケースをすでに40件以上、確認しており、台湾の教育省を通じて、厳重な抗議を行なっている。
中国教育省が発表した声明によると、中国人学生が台湾に留学することは、中台関係を平和的に発展させるうえで極めて重要としながらも、「台湾の情報機関による扇動は、中台間の協力的な教育交流への重大な妨害であり、台湾側は直ちに、情報収集活動をやめるべきだ」と指摘している。
これに対して、台湾の国家安全局は「台湾の情報当局は学問の自由と大学の自治をつねに尊重しており、中台間の学術的な交流や進展に干渉するようなことはしていない」としたうえ、大学の キャンパスで情報活動は一切、行なっていないなどとの声明を発表し、情報活動を否定した。
台湾の馬英九政権は今年、中国人留学生を受け入れる中国の高等教育機関を320大学・研究機関に拡大。中国との教育交流の拡大に力を入れているが、台湾の情報機関による、こうした活動が実際に行なわれているとすれば、情報機関の独自の判断に基づく行動なのか、あるいは関係当局ぐるみなのか、極めて興味深いところだ。
ネット上では「中国政府も台湾の留学生を受け入れており、彼らから台湾の内部情報を収集している。また、中台間で、それぞれスパイ工作が暴露されており、台湾側が情報工作を仕掛けてもおかしくはない」との書き込みも見られている。