バブル最末期、たったひとりで第一勧業銀行(現在は統合してみずほ銀行)を中心とする金融界から100億円以上の不正融資を引き出した「伝説の総会屋」小池隆一氏。逮捕、服役後は総会屋を引退し、メディアを避け、九州でひっそりと暮らす小池氏が本誌のインタビューに応じた。
公共事業や再開発、企業の海外進出では、「違法な総会屋」が「合法的なコンサルタント」に看板を掛け替えて今も暗躍していると小池氏は指摘する。
「いわゆる総会屋は姿を消しましたが、銀行や企業と癒着する反社会的な存在が消えたわけではありません。総会屋が得る賛助金は、コンサルタントが得るコンサル料という名前に変わっただけです。
これは最近の話ですが、ある大手住宅メーカーの創業者が経営悪化の責任を問われて会社を追われました。そこにコンサルタントX氏が現われ、創業者に“私が株主総会やスポンサー企業に根回しするから復帰しないか”と持ちかけた。一昔前には総会屋が担っていた仕事です。
そしてX氏は創業者から“工作費”として2億5000万円のコンサル料を得ました。しかし、X氏は創業者の利益になることは何もできず、結局、創業者から訴訟含みの内容証明を送りつけられました」(小池氏・以下「」内同)
本誌10月17日号では〈元世界チャンプ薬師寺保栄が告発!「みずほ本店行員に1億3000万円騙し取られた」〉と題した記事を掲載した。その「みずほ行員の詐欺事件」(※注)にも複数人の自称コンサルタントが関与し、投資家が騙し取られた資金の一部が「コンサル料」として彼らに流れていた。
「身内が不祥事を起こしたのに銀行が刑事告訴しないのは、悪しき互助精神そのものです。同時にその不祥事は、かつては誰の目にも明らかに反社会的な存在だった人たちが、“合法の仮面”を被って公然と活動している証左でもあります。私は自分が清廉潔白な人間だというつもりはありません。ただ、そうした実態を知っているので、お話ししたまでのことです」
「呪縛」はいまも続いているのである。
【※注】みずほ行員の詐欺事件/みずほ銀行の元本店行員O氏が投資家を本店応接室に招き入れ、老舗出版社の株を買うためのファンドに投資しないかなどと持ちかけ、多額の現金を騙し取った容疑で警視庁が告訴状を受理した事件。O氏周辺の複数の「自称コンサルタント」に投資資金の一部が流れた。
※週刊ポスト2014年11月21日号