中国の大気汚染は日本にとっても関心の高い懸念事項だ。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。
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2014年11月上旬に北京の雁栖湖でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれていた期間中、北京には久しぶりに晴天が帰ってきた。これを称して「APEC BLUE」とメディアは報じたが、中国の直面する大気汚染は一過性の対策で何とかなる問題ではない。
会議期間中の空気清浄の維持を担当した環境保護省は、事前の会見で「もしAPEC期間中に大気の重度汚染が見られれば、直ちに最高レベルの”重度汚染応急措置”に従って対処する」(中国環境科学研究院柴発合副院長)と宣言していた。
そもそもAPECにおける空気清浄任務は、「2010年の上海万博の時よりも力を入れて行う」というレベルであった。そのため市内へ乗り入れできる自動車のナンバーを奇数と偶数にわけて規制するだけでなく、有害物質を排出すると考えられる工場の営業を一時的に停止させて対応した。
驚くべきことだが、その規制の対象となった工場は、通常であれば広くても北京周辺の五つの省となるはずだが、今回はさらに内陸の六つの省にまで及んだという。もともと気候の良い秋に、数日間の青空を作りだすためにここまでしなければならないと考えれば汚染の深刻さは明らかだ。
事実、石炭暖房が解禁となる10月から中国の大気の汚染度は増している。10月(1日から24日まで)には全国74都市で重度汚染が観測されたのは94日、うち極めて深刻なレベルとされた日数も27日に達していた。
この数字は2013年と比較すれば若干だが改善(重度汚染96日、極めて深刻な汚染33日)しているとも受け止められるのだが、気象条件などで生じる誤差の範囲だという。というのも中国の大気汚染問題が解決されるまでには、まだまだ長い年月がかかると考えられているからだ。
2014年10月20日付『人民日報』は国家室内環境に観測センターの宋広生主任の談話を引用してこう記す。
〈イギリス、日本、ドイツ、アメリカが大気の汚染を浄化した経験を踏まえて考えれば、中国の大気汚染対策には20年から30年はかかるだろう。最も厳しい政策を採り、かつ最も先進の技術を使ったとしても、汚染を浄化するのに15年から20年は必要だ。〉
やはり大気汚染は重い課題なのだ。