【書評】『女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち』仁藤夢乃/光文社新書/821円
【評者】佐藤みどり(ブックファースト淀屋橋店)
人生の中でたった数年間。今や「JK」とも呼ばれる「女子高生」とは、一体どんな存在なのだろうか。本書は、「JKリフレ」や「JKお散歩」など、いわゆる「JK産業」にかかわる女子高生の実態を、丁寧な取材を通して明らかにした一冊だ。
女子高生を巡る問題は、今に限ったことではない。1990年代にもブルセラや援助交際など、大きく取り上げられていた。その時にも、そして今も、ほとんどの大人がこう思っているだろう。「自分には関係ない」「私の娘は大丈夫」と。
私も、何かしら特別な事情を抱えている少女が踏み込む世界だと思っていた。だが著者によれば、家庭や学校で特に問題のない「普通」の少女たちもその中にはいるという。誰でもスマホを持つ時代、“入口”はあちこちに開いているのだろう。
そこに入り込んでしまう少女たちだけに責任を押しつけるのは簡単だ。しかし、少女たちを誘い込むのも消費するのも大人である、ということを、本書を読むまで私自身深く考えていなかったと思う。
「裏社会の大人たちは、居場所づくりのプロだ」と著者はいう。住む場所を用意したり、学習支援や仕事を褒めたりといった手口で、「居場所」をつくり少女たちを信用させている。少女たちの抱える寂しさや弱さにつけこんだ、優しさに見せかけた悪意だ。
では、大多数を占める表社会の大人たちには何ができるのか。自分には関係ないと切り捨てず、せめて知ることが大事だ。その第一歩として、本書を読むことから始めてほしい。いつ、自分の娘が引き込まれるとも知れない問題なのだから。
※女性セブン2014年11月27日号