出雲大社にほど近い稲佐の浜に「神迎え」の祝詞が響く
旧暦10月「神無月」──日本各地の八百万の神々が集まる島根・出雲では「神在月」(かみありづき)と呼ぶ。旧暦10月10日(今年は12月1日)、昨年60年ぶりに本殿の遷宮がなされた出雲大社では「神迎祭」が行なわれ、以後8日まで「神在祭」の期間となる。
目に見える世界「現世」(うつしよ)である国土を天照大御神に国譲りした大国主大神は、目に見えない「幽世」(かくりよ)である神々の世界を治めることとなった。旧暦10月、日本各地の神々は出雲に集まり、大神のもとで人間の縁などついて「神議り」(かみはかり)という“話し合い”をするという。
今年も12月1日の夜、大社の西1キロにあって、天照大御神の使いの神が大国主大神に国譲りの談判をした稲佐の浜で「神迎え」の神事が行なわれる。
暗闇の中、掃き清められた浜でかがり火に照らされる白装束の神職たち。注連縄を張り巡らせた祭場の中には、神を迎えるための依り代となる榊の神籬(ひもろぎ)が置かれる。神籬は白い絹垣で囲われ、神々の使いとされる龍蛇神を先導に大社へ向かう。境内の神楽殿で祭事を執り行ない、その後神々は、宿舎となる大社内の「十九社」に入る。こうして、1日目の「神迎え」は終了する。
一夜明けた2日から8日まで、神々は稲佐の浜近くにある上宮と呼ばれる社で、連日「神議り」を行なうのだが、この間、大社では「神在祭」が行なわれるほか、「縁結大祭」が行なわれ、多くの女性参拝客が訪れる。この祭は、縁結びが「神議り」の大きな議題として話し合われることに由来する。
撮影■古川誠
※週刊ポスト2014年11月28日号