日本一の本の街、東京・神田神保町。学生、サラリーマンが行き交う白山通りに突如現われたこの僧侶、奈良時代創建の古刹「十輪院」(奈良県)の橋本純信住職(66)である。
8年前に近鉄奈良駅の商店街に仏教相談所「みんなのお寺」を開設するや、毎月100人の大盛況。「ならば東京でも」と今年6月、雑居ビルの一室に開いた。
「家族や友人に話せない職場の人間関係の悩みなど、僧侶に聞いてもらいたい人が都会にはたくさんいます。命の尊さを教えたいと、飼っていたフナの供養をするために4歳の子を連れて来たご夫婦もいました」(橋本住職)
やって来るのはサラリーマンやOLが中心で、一度訪れると常連になる人も多く、さながら現代の「駆け込み寺」となっている。ちなみに、室内にはブースが5つあり、「写経」「瞑想」「先祖供養」などが行なえるうえ、粉骨機も用意され、「お寺の機能はすべて揃っています」(同前)という。
月に2回来る橋本住職以外に、6人の僧侶が毎週交代で奈良から夜行バスでお勤めに。朝夕、僧侶のあげる読経に参加するだけなら無料だという。世知辛い現代、疲れた心を御仏に癒してもらってはいかがだろう。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2014年11月28日号