日本人は“節目”を祝うのが好きだ。60歳で還暦、70歳で古稀など長寿の祝い。そして、自治体が様々なイベントを行なう20歳の成人式。しかし最近は、全国の小学校で4年生が対象の“成人式”が広まっているという。いったいどんな行事なのか。
20歳の半分、10歳だから「2分の1成人式」。2年前、現在6年生の長女の“成人式”に出席した都内在住のA子さん(39)はこう語る。
「正直なところ、学校行事のたびに仕事を休むのは負担だったりします。まして自分たちの時代にはなかった行事なので、どんなことをやるんだろうと思っていました。
実際に出てみると、体育館で保護者を前に子供たちが合唱するなど、出し物中心の発表会といった感じ。都内や関東近県に住んでいるママ友たちから聞いた話では、学年全体やクラス単位など、学校によってスタイルはさまざまです。私のところは親子で『マイムマイム』を踊りました(笑)。卒業式などでよくある『呼びかけ』が行なわれるところもあるようです」
ベネッセが2012年に実施した保護者アンケートによると、9割近くが「2分の1成人式」に「満足」したと回答している。その理由は「子供の成長を実感して感動した」が最多だった。
岐阜県高山市の小学校では、昨年初めて「2分の1成人式」を開催。
「保護者が子供への手紙を対面して朗読するサプライズ演出がありました。互いに涙を流しながら向き合う親子の姿を見て、教師や居合わせた取材陣も思わずもらい泣きしてしまいました」(取材したジャーナリスト)
中には数十年続けている学校もあるが、全国的に広がったのはここ10年余りのこと。東京都の場合、10数年前から実施校が出始めた。統計をまとめた2006年時点で、約1300ある公立小学校の半数以上で実施されている。
発達心理学が専門で『子どもの「10歳の壁」とは何か?』(光文社新書)の著書がある渡辺弥生法政大学教授が語る。
「内容にもよりますが、10歳の節目を祝う行事が広まるのはいいことだと思います。よく“10歳の壁”などと言われますが、発達心理学の見地からは、過去を振り返り未来を予測する『時間展望力』や抽象的な思考力が身につくなど、10歳前後は子供の成長に質的な変化が見られる『飛躍』の時期です。
一方、個人差が大きいのも事実で、もともと教育現場ではその年頃を学習などでつまずきが見られる分岐点と捉えていました。そんな学校の先生にとって『節目』の“成人式”は受け入れやすかったのでしょう」
「10歳」は保護者にとっても大事な節目になる。
「子供が自ら悩み始める思春期の入り口でもある。低学年の時と比べて手がかからなくなるからこそ、より『気持ちをかけていく』ことが保護者には求められます。2分の1成人式で子供の成長ぶりに感激したうえで、子供への関わり方の変化を意識してほしいですね」(渡辺氏)
※SAPIO2014年12月号