現在、日本には77の刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)があり、収容されている人の数は男性が約6万人、女性は約5000人だ。
女性受刑者は、札幌、福島、栃木、笠松(岐阜県)、加古川(兵庫県)、和歌山、岩国(山口県)、美祢(山口県)、西条(愛媛県)、麓(佐賀県)にある10の刑務所に服役している。
そのひとつが、美祢社会復帰促進センターだ。広大な敷地は、およそ東京ドーム6個分。エントランスにある食堂には地元の老夫婦が犬を連れてランチに訪れ、スムージーなどカフェメニューも用意されている。
およそ刑事施設とは思えない開放的な同センターは、日本初の官民協働刑務所となる。
「当所はPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ※)手法を取り入れ、2007年に発足。施設の建設から運営、管理すべてを民間に委託しており、そのノウハウが生かされています。その名の通り早期に社会復帰させることが目的。全国から選ばれた犯罪傾向が進んでいない初犯受刑者に対して、改善更生の意欲を高めるために矯正指導をしています」(調査官)
地域に関係なく、全国から受刑者を募る。職業訓練を経て社会で働くことが目的のため、入所時に60才未満であることが条件。20~40代が約85%と、他の女子施設と比べて平均年齢は圧倒的に若い。年齢に制限があることに加え、初犯で犯罪傾向が進んでいないなどの条件があるため収容人数は定員を大幅に下回っている。
取材時にすれ違う受刑者たちは刑務官や記者と挨拶を交わす。「こんにちは!」と、実にさわやかだ。他の刑務所では受刑者と言葉を交わすことはおろか、すれ違うことすらなかった。そうした挨拶も、教育の一環として励行されている。
被収容者を「受刑者」ではなく「センター生」と呼ぶことも特徴のひとつ。“普通の社会生活に近い”行動は、生活の随所で実感することができる。例えば、居室。美祢では単独室が原則とされ、1室あたり約5畳。食事は収容棟中央の「多目的ホール」にて。食事時間以外は、パブリックスペースとして自由に使うことができる。入浴時間は30分。職員の監視がないため、「あと何分!」と急かされることもない。
なぜ職員の監視がないのか。その背景にはこの施設最大の特徴があった。施設のセキュリティーは警備会社大手のセコムが担当しており、センター生は胸元にICタグの着用が義務付けられている。足取りは中央警備室で管理され、センター生の位置情報の把握や各室の施錠解錠も瞬時にできる。また施設内の至る所に監視カメラがあるため、移動で独歩が許されているのだ。
※女性セブン2014年12月4日号