スペイン南部、人口3万人ほどの小さな都市コリア・デル・リオ(以下、コリア)に、「サムライの末裔」と称するスペイン人が600人以上暮らしている。彼らの姓は「ハポン」(スペイン語で日本の意)。どんなルーツを持つのか。
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コリアに暮らす「ハポン」姓のスペイン人は、約400年前に東北から海を渡った「慶長遣欧使節」の末裔とされる。慶長遣欧使節とは1613年10月に仙台藩主・伊達政宗がノビスパニア(メキシコ)との通商条約締結を求め、イスパニア(スペイン)国王及びローマ教皇の元に派遣した使節のことだ。
仙台藩士の支倉常長を大使とした約200人の一行は月浦(現・石巻)を出航し、3年がかりでメキシコ、スペイン、ローマを訪れた。この時、帰国せずスペインに留まった日本人がコリアに住み着き子孫を残したと考えられている。
『支倉常長遣欧使節 もうひとつの遺産』(山川出版社刊)の著者で現地を調査した太田尚樹・東海大学名誉教授が語る。
「今も教会に残る名簿の調査などから、8人の日本人が残ったと考えられます。恐らく、現地の女性と恋に落ちたのでしょう。ハポン姓の人々はまさに『サムライの末裔』です」
現在、コリアに住むハポン姓の人々にとって、遥か遠い日本は郷愁の対象だ。
「現地の人々の合い言葉は 『ソモス・ハポネス!(私たちは日本人だ!)』。顔立ちや風貌に日本人の面影はもはやありませんが、誰もが真面目で努力家の日本人を尊敬し、ハポン姓であることを誇りに思っています」(太田氏)
ハポン氏たちは、祖先が出航した石巻が東日本大震災で大きな被害に見舞われたことに心を痛めているという。
一方、ハポン姓の謎をめぐる科学的調査も進む。昨年、日本の研究者らが複数のハポンさんから血液を採取。DNA鑑定の結果は今後、発表される予定だ。
※SAPIO2014年12月号