11月22日の長野県北部地震を2か月半前にピタリと予知していた東大名誉教授・村井俊治氏によるメルマガ『MEGA地震予測』がどれだけ実績を挙げても「地震予知」の本流を司る地震学者たちからは、同氏の研究は「予測とはいえない低レベルなもの」と無視され続けている。
そんな「地震ムラ」の反応に比べ、国民の反応は率直だ。村井氏のメルマガ購読者は3万2000人を超え、支持は広がり続けている。根底にあるのはやはり「現在の地震予知への不信感」だろう。
国民の多くが望んでいるのは、地震学者たちが注目する地震発生のメカニズムや学術的議論ではない。生命と財産に関わる「本当に危険な場所はどこなのか」という情報だ。「地震ムラ」は、もっと広い視野と柔軟なアプローチで「国民の不安」に向き合うべきではないか。
地震予測が困難を極めることはよく理解できる。ならば、せめて可能な限り多くのデータを、様々なアプローチから提示するのが賢明な判断ではないか。
今回本誌は、日本地震学会、政府の地震調査研究推進本部、そして気象庁に「電子基準点のデータを地震予測に用いることを検討してもよいのではないか」と問うた。
しかし気象庁は「地震予知は、唯一実現の可能性がある東海地震を除き、現状では研究段階であると認識しております」(広報室)と、質問に正対しようとしない。地震調査研究推進本部は、「見解はありません」(事務局)というのみだ。
地震学会に至っては、「地震学会としては特に見解はありません。会員の意見をお聞きになりたいのなら、地震学会でご発表ください」(広報委員)と、学会参加者でなければこの問題には関わるなといわんばかりの回答だった。もはや国民のカネで研究しているという自覚さえ失った傲慢な態度というしかない。
「地震ムラ」をここまで増長させてしまったのはメディアの責任も大きい。
テレビでは「地震学会の元会長」など“権威”ある専門家をスタジオに呼んで、「今後の土砂崩れには気をつけるべきだ」など誰でも分かるようなコメントをさせる。しかも司会者たちはそれに神妙に頷く。新聞でも行政や学者の意見を批判なく垂れ流すばかりだ。
政府の地震研究関連予算は年間約120億円(2014年度)にのぼり、この20年の総額は約4000億円にもなる。「大地震が起こるたびに予算だけが増える」という批判もある。血税を今後もムダにし続けないためにも、専門家たちには学閥や“ムラの論理”にとらわれない研究が、メディアにはさらに厳しい監視の目が求められる。
■JESEAでは毎週水曜日にメルマガ『週刊MEGA地震予測』を月額216円で発行している。詳しくはhttp://www.jesea.co.jp/
※週刊ポスト2014年12月12日号