同じ過ちを繰り返した。12月1日にロシア沖のベーリング海でスケトウダラ漁船「501オリョン号」が沈没した事故では、乗組員60人のうち12人が死亡。7人が救助されたものの、残り41人が依然行方不明だ(3日時点)。水温2度の極寒の海だけに、生存は絶望視されている。
今回の漁船沈没事故は、300人以上の死者・行方不明者を出した旅客船・セウォル号沈没事故と2つの類似点がある。
まず「船体の問題」だ。セウォル号は韓国の会社が日本の海運会社から買い取ったあと不適切な改造を施した上に、まともに船体検査をしていなかったことが明らかになっている。
オリョン号はスペインから2010年に買い取られたもので、建造後36年経った老朽船だった。在韓国ジャーナリストの藤原修平氏が語る。
「近年の遠洋漁船の事故13件は、すべて建造後20年以上の船ばかり。韓国の遠洋漁船の75%以上は建造後25年経過しているとされていて、老朽化問題は以前から懸念されていました。オリョン号が適切な整備を受けていなかった疑いも指摘されています」
もう一つが「人災」である。セウォル号は急旋回により船が傾いたことや船長が真っ先に逃げ出したことが問題視されたが、今回の事故では風速20mでうねりを伴う荒波の中、漁を強行したことが事故の一因になった。
行方不明者の家族は韓国メディアの取材に対し、「船が傾き始めて沈没するまで4時間以上の余裕があったのに、脱出命令を適切に出さず、救助準備もままならないまま惨事になってしまった」と語っている。
セウォル号事故と違うのは、乗組員の多くが外国人だったことだ。内訳は韓国人11人(うち4人死亡、7人行方不明)のほか、インドネシア人35人、フィリピン人13人、ロシア人1人。韓国語が通じない彼ら外国籍船員に避難指示が適切に伝わったかどうかも検証が必要になってくる。その結果次第では、国際社会からの非難も予想される。セウォル号の教訓は全く活かされていない。
※週刊ポスト2014年12月19日号