英語の「ヒップ(hip)」=「お尻」と覚えている人は多いのではないか。だが、その感覚で話すとネイティブには違うニュアンスで伝わる。ヒップが実際に示すのは腰骨の一番出っ張った部分だからだ。日本人が考える「お尻」のことは「バトックス(buttocks)」もしくは「ボトム(bottom)」といったほうが伝わりやすい。
似た例は他にもある。「チャレンジ(challenge)」という言葉は、本来は「(人に)挑戦する」という意味だ。つまり、「難しい仕事にチャレンジする」は、やはりネイティブに違和感を与えてしまう。
簡単な単語やフレーズでも、理解しているようで実は意味や使い方を間違えやすい英語表現は多い。学校での「和文英訳」や「一語一訳」教育の弊害といえる。
大人が英語を学び直すというと、とかく文法や難しい単語を必死で覚えようとするケースが多いが、実際には中学英語で習う単語さえ駆使できれば、たいていの日常会話や旅行会話は成立する。難しい表現を丸暗記するよりも、英語独特の感覚を身につけて身近なフレーズを使えるようになることが上達の早道なのだ。
そこで、英語を学び直したい大人のために身近な英語表現をまとめた『中学用英和・和英辞典の内容だけで作った 大人のためのやり直し英語練習帳』(小学館刊)に掲載されている問題から、とくに知っておきたいフレーズや単語の使い方を紹介する。
例えば、日本語で一口に「あし」といっても、英語では複数の表現がある。日本語にも「足」と「脚」の使い分けはあるが、英語の「フット(foot)」は人間の足に使う単語で、他の動物には基本的に使用しない。
「人間の足と違ってかぎ爪や肉球があるので、両者は違うものだと英語圏では捉えています」
そう説明するのは、同書の英文校閲を行なった、翻訳家のベンジャミン・ボアズ氏だ。
「間違えやすいのはカタカナでよく使われる、日本語として定着した単語です。例えばワーク、ジョブ、タスクはどれも『仕事』と訳されますが、英語のニュアンスには違いがあります」
◆英語クイズ
次の英語はいずれも「仕事」と訳されますが、本来の意味はどれでしょう。
ア:work(ワーク)
イ:job(ジョブ)
ウ:task(タスク)
【1】課せられた「任務」
【2】体や頭を使ってする「作業」
【3】収入を得るための「職」
答え ア-【2】 イ-【3】 ウ-【1】
●この他にもbusiness=「事業」「商売」や、labor=(骨の折れる)「肉体労働」などがある。
※週刊ポスト2014年12月19日号