自民党内では、安倍晋三首相が総選挙を前に公認権を振りかざし、増税推進派の野田毅・税調会長を「公認しない」と恫喝して反対派を震え上がらせた。そんなこともあり、反主流派が口を閉ざしたと同時に、総理にゴマをする側近たちの「茶坊主政治」が花盛りだ。
首相側近の萩生田光一・自民党総裁特別補佐による報道統制もそこに根がある。
解散直後、TBSの報道番組(11月18日)に出演した安倍首相は、番組中に「お給料は上がってない」とアベノミクスに否定的な街の声がVTRで流されると、「これおかしいじゃないですか!」と色をなして反論した。
その翌日、萩生田氏は在京キー局の編成局長、報道局長あてに、〈街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう〉などと細かく報道内容を規制する異例の文書を出して恫喝した。
萩生田氏は選挙後の組閣で「官房副長官」や「首相補佐官」への就任が有力視されている。そこで本人は「総理、私がテレビを黙らせました」とアピールしたかったのだろう。
ご機嫌取りでは側近筆頭格の世耕弘成・官房副長官も負けてはいない。この選挙中、安倍首相と菅義偉・官房長官がともに全国遊説に回り、官邸を空けることが多かった。世耕氏はあざといパフォーマンスを演じて見せた。官邸の危機管理部門のスタッフが思わず苦笑する。
「参院議員で選挙区に入る必要のない世耕さんは『留守は私が守りますから、安心して遊説に行ってきてください』とばかりに官邸に泊まり込んだ。総理も官房長官も遊説は日帰りが多く、何か起きればすぐ対応できる体制が敷かれているのだから、副長官がわざわざ官邸に泊まる必然性はない。よほど忠誠心を誇示したかったのだろう」
選挙後に発足する第3次安倍内閣では、麻生副総理など首相のお友達の主要大臣を除いて政治資金疑惑を抱える大臣が一掃され、世耕氏、萩生田氏らの側近グループがこれまで以上に内閣・官邸の中枢で力を持つという見方が有力だ。
※週刊ポスト2014年12月26日号