都内のラーメン店「青葉 中野本店」には大行列ができていた。普段から昼時は列が絶えない人気店だが、12月5日に発売された『ミシュランガイド東京 2015』に掲載されてから客足がさらに伸びた。
同書は今回からラーメン店など“庶民のグルメ”が掲載されたことで話題になっている。が、その店選びに麺食いたちから不満や異論が上がっている。特に、あっさり系のラーメン店ばかり紹介されていて、こってり系は少なく、ブームが続く「とんこつ系」に至っては冒頭の「青葉」しか掲載されていないことは物議をかもした。
掲載されたラーメン店は全部で22店舗。複数種類の鶏からスープをとった鶏そばが人気の「らぁ麺やまぐち」(新宿区)や、トリュフを隠し味に使った醤油そばで有名な「蔦」(豊島区)など。ラーメン通にとってはいずれも評判の店ばかりだが、確かにあっさり系に偏っている。「青葉」の後藤崇之・店長はこう語る。
「当店はとんこつスープと魚介系スープを合わせて使っているので、旨みがありながらも比較的あっさりしています。ミシュランにはそれを評価していただけたのではないでしょうか」
唯一のとんこつ系である「青葉」ですらあっさり系なのだ。街を歩けばとんこつ系の店はあちこちで目に付くのになぜ偏りが出てしまったのか。ラーメン評論家の石神秀幸氏はこう話す。
「最近、またとんこつブームが来ています。目を見張る新店もとんこつ系がかなり多い。にもかかわらずここまであっさり系に偏っているのは、調査員の好みでしょう。少人数で調査しているのか、個人の好みが露骨に表われていると思います」
ミシュランガイド広報事務局に問い合わせると、「調査の詳細については明かせませんが、『ミシュランガイド東京 2015』では7人の日本人が手分けしてお店を訪問しています」との返答だった。石神氏が続ける。
「国内もさることながら、とんこつラーメンの人気は海外でも飛ぶ鳥落とす勢い。有名チェーンの『一風堂』はアジアをはじめ欧米など計12の支店を海外に持っています。とんこつ系を掲載しないのは、グルメガイドとして非常にもったいないことをしているように感じますね」
80年以上も高級料理店を評し続けたミシュランガイドが庶民の味を理解するにはもう少し時間がかかりそうだ。
※週刊ポスト2014年12月26日号