衆議院選挙における自民党大勝の歯止めにすらなれなかった民主党の体たらくを象徴していたのが、同党制作の選挙CMだった。5日から放映された「女性の味方編」は約15秒の中で、20代~30代と思われる3人の女性が登場し、それぞれの「夢」を語る。
〈夢は正社員になること〉〈安心して子育てをしたいです〉〈お金を貯めて、彼氏と結婚したい〉―満面の笑みをみせ、そして〈今こそ、流れを変える時〉と締めくくられる。
党首が政策を力説する他党のCMとは一線を画し、女性をターゲットにする狙いがあったのだろうが、「非正規を下に見ている」「女性蔑視ではないか」と猛反発があがった。
作家の麻生千晶氏は「旧態依然の考えが色濃く反映された論外なCMだ」と指摘する。まずは〈夢は正社員〉という点だ。
「正社員こそ唯一の正しい働き方だという、正規職と非正規職の理不尽な差を強調する内容です。私の周囲にも、正社員として朝から夜まで拘束されることを嫌って、自らの選択で非正規職を選んだ女性は多い。ピントが外れています」(前出・麻生氏)
日中の公園で子供と戯れる〈安心子育て〉を訴えた女性は一見して専業主婦を想起させるが、若い世代の共働きが当たり前になった社会情勢を考えれば時代錯誤に映る。麻生氏が続ける。
「極めつきは3人目の“夢”。結婚するにはお金が必要だといっているようなものです。アベノミクスの“マネー礼賛思想”を批判しながら、これでは自分たちだって拝金主義。しかも、そうした“夢”を叶えるための政策はCMのどこにもない。これでは自民の対立軸になどなれるはずがない」
選挙中、麻生太郎・財務相が「子供を産まないのが問題だ」と暴言を吐いた際、海江田万里・民主党代表は厳しく批判したが、このCMを見ると女性への偏見は民主党も大差ないといわれても仕方ない。
※週刊ポスト2014年12月26日号