理化学研究所の小保方晴子氏への処分は、来年3月にも出されると見られている。それは、「来期の契約を更新しない」という判断で同氏を切ることが可能であることを意味する。これにより「懲戒解雇」ではなくなるため、労働に関する訴訟沙汰を避けられる。しかし、本来であれば理研側が小保方氏を訴えるのが当然の事案である。
理研が3月に行なった会見によれば、当時ユニットリーダーだった小保方氏には、1年間で研究費1000万円と、研究員の雇用などに使う人件費1000万円の計2000万円が配分されていた。さらに年間6億円の笹井研究室の研究費も使用していた可能性が指摘されている。その原資の多くは税金である。弁護士の長谷川裕雅氏がいう。
「3月に終了する調査結果次第では、詐欺罪での刑事告訴が考えられます。ありもしないSTAP細胞をあるかのように見せかけて研究費を騙し取った疑いです。立件は簡単ではないが、実刑となれば10年以下の懲役になる。また、民事でも損害賠償請求が行なわれる可能性はあります」
一連の不正では、理研のガバナンスに問題があったことは間違いない。そのため理研はことを荒立てたくないのだろうが、独立行政法人として血税を扱う以上、うやむやにすることは許されない。
理研は疑惑の舞台となった「発生・再生科学総合研究センター」を解体し、11月21日付で「多細胞システム形成研究センター」に再編した。小保方氏はユニットリーダーの職を解かれ、埼玉県和光市の理研本部付となった。今のところは、神戸にある自宅マンションで暮らしているようだ。付近の住民がいう。
「最近はお葬式のような黒いスーツを着ていました。会見の時よりさらに痩せていて、憔悴しきっている雰囲気でした。時折お父さんと思われる白髪の男性が訪ねてきます。黒いレクサスがお迎えに来る時もあった」
家族にとっても厳しく苦しい年の瀬だ。
※週刊ポスト2014年12月26日号