正月のおせち料理が「我が家の味」から「選べる宅配グルメ」に変わって久しい。百貨店で注文できるおせちのパンフレットには有名料亭や高級レストラン、一流ホテルの名前が並び、スーパーやファミレスもオリジナル商品販売に乗り出している。
そうした大盛況の裏で活躍するのが「業務用食品」業者だ。おせちの定番メニューを大量製造し、冷凍パック詰めにして飲食店やホテルに卸すビジネスが拡大している──。
ある小料理屋の店主はこんな言い方をする。
「うちも去年から常連客向けにおせちを作り始めました。夫婦2人だけという家庭も多いので、量は少なめで値段は1万5000円。材料の8割は飲食店専門に冷凍調理品を配送してくれる業者から調達しています。
電話帳みたいな分厚い商品カタログがあって本当に何でも揃う。食材で仕入れると材料が余って損をするけど、カタログ注文ならコストが決まっていて、それに上乗せして売値を決めれば済む。1万5000円のおせちの原価は、容器代を入れて5000円以内にしている」
ちなみに豪華おせちの場合、原価の大部分を「器」が占めるケースもある。近年では木彫りの模様があしらわれたお重やクリスタル製の容器に入ったおせちも登場した。
大手百貨店関係者によれば、「60万円の商品で器の値段が40万円以上するものまである。それは極端な例だが、高いおせちほど器の値段の占める割合が上がるのは確かだ」という。贅沢な気分を味わうには器も重要だが、「値段の半分以上がお重」というのも妙な話である。
※週刊ポスト2014年12月26日号