総選挙で安倍晋三首相は「アベノミクスを問う選挙」と位置付け、「景気回復、この道しかない」と繰り返した。自民圧勝、野党惨敗という結果となりアベノミクスは信任されたかのような形になったが、根本的な問題が理解されていないため「行き着く先は国債暴落・ハイパーインフレの道しかない」と大前研一氏は警鐘を鳴らす。
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日本の問題点をもう一度整理すると、個人金融資産や企業の内部留保が市場に出てこないまま“塩漬け”状態になっていて消費も設備投資も上向かない。日銀は禁じ手とされる金融機関などからの国債買い入れを増やし続け、すでにGDPの47%に当たる230兆円もの国債を保有している。こんな国は世界に類がない。
根本的な問題解決策は、私が25年以上前から提言しているように、この国の仕組み(統治機構)を道州制の導入によって中央集権から地方分権に変えるしかないのだが、それは今の中央官僚がいる限り、よほど強いリーダーが登場しないと無理である。
日本人は、一人一人はそれなりに問題意識を持っていても、集団になると「易きにつく」性質を持っている。もはや、この国の仕組みを変えることは、しばらく諦めるしかなさそうだ。
そうなると、論理的に考えて、アベノミクスの行き着く先は「国債暴落」と「ハイパーインフレ」ということになる。ハイパーインフレになれば、1000兆円を突破した国の借金も帳消しになる。安倍首相お得意のフレーズになぞらえれば、「ハイパーインフレ、この道しかない」のである。
しかし、ハイパーインフレは年金生活者などを破綻に追い込み、国民生活は大混乱に陥る。その時、どう生き延びていくのか──。
サラリーマンは自己投資をして“余人をもって代えがたいスキル”を身につけ、「名札」と「値札」が付く人材になるしかない。資産がある人は、キャッシュフローを生む不動産に換えたり、ハイパーインフレになっても必ず売れる商品を作っている会社の株を買ったり、財政規律がとれている資源国(ノルウェー、カナダ、オーストラリアなど)の外貨に換えたりしておくべきだと思う。
安倍政権を延命させた今回の総選挙は、そういう備えをせざるを得ない「この道」を国民が選択した、ということなのである。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号